企業文化を変革するとは
社員のアイデンティティーを再定義すること

Ashley Whillans「チームラボボーダレス」では「伝統」と「革新」の融合を体感した=2024年6月19日、東京都港区 写真提供:Ashley Whillans

 日本での研修から刺激を受けたこともあり、今後は日本企業の事例についての研究をさらに進め、教材を執筆したいと考えています。教材のテーマは変革マネジメント。ピラミッド型・階層型の組織からフラット型の組織へと変わろうとしている企業、あるいは、報酬制度を年功序列から成果主義へと変えようとしている企業を人事戦略の観点から分析してみたいと思います。

 前回は日本のスタートアップ企業の事例を教材化しましたが、今回の日本での研修で、日本の伝統ある大企業を研究するのも面白いのではないかと思いました。たとえばNTTグループや日立製作所のように、歴史が長く、数十万人もの社員を抱えていて、なおかつ、海外進出を積極的に進めているような企業が、どのように人事評価システムや企業文化の変革に取り組んでいるのか、調査してみたいと思っています。

 特に関心を持っているのが、日本企業はどのように「伝統」と「革新」のバランスをとるべきなのか、というテーマです。米国型のビジネス慣習をどれだけ取り入れるべきなのか、どれだけ伝統的な価値観や手法を維持するべきなのか、あるいは、日本的な企業文化が根付いている中で、どのように世界中の社員に変革を促すのか、変革を推進するのに効果的な方法は何か、といった問題を深掘りしてみたいと考えています。