「あなたの職場は、意識が内に向きすぎていませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「自社のことだけ考える職場」の問題点について指摘します。

【不祥事が起こる予兆?】人が辞めていく「内向きな職場」の共通点・ワースト3皆、意識が内に向きすぎていないか?(イラスト:ナカオテッペイ)

会社の「内」を向いて働く組織

 社内における対話は重要である。しかし対話が必要なのは会社の中だけではない。
 顧客やお取引先、メンバーの家族や知人、業界他社や他業種の人たち、官公庁、ひいては社会そのもの。社外との対話も、組織文化を健全に保ち続けるために不可欠な習慣である。

 社会と対話しない、言いかえれば社会に無関心な組織はそれだけで多くのリスクを内包する。外との接点が少ない、あるいは自社以外の人や話に興味を持とうとせず、おのずと内向きになる組織。その共通点は以下のとおりだ。

 ①社内で立場が上の人の顔色しか窺わない
 ②「自分たちの常識=社会の常識」と考え、世間からズレている
 ③自分たちの常識を他社に押し付け、社会と共創できない

 やがて組織が自己目的化して暴走し、コンプライアンス違反が起こる。内向きな文化が災いし、社内論理だけが優先され、不祥事を起こす企業が後を絶たない。社内統治、いわゆるガバナンスの崩壊だ。

社会を知り、ルールや価値観をアップデートする

 コンプライアンスと言うと法令や社内ルールといった明文化された規則を守ることだけが正当化されがちだが、その考えは改めたほうがいい。
 その規則や規範が腐りかけ、もとい、賞味期限切れしていたら話にならない。

 近年では、たとえ法律では裁かれずとも、SNSなどの社会の声によって批判され業績低迷や求心力の低下につながることも少なくない。

 自分たちは世間からどう見えているか、ルールや規範がもはや時代遅れではないか、独り善がりなものになっていないか、じつは社会に迷惑をかけているのではないか。世の中のトレンドに敏感になりながら、時代錯誤な仕事のやり方や社内ルールを変えていく。組織の窓を開け続け、価値観をアップデートする。コンプライアンスを守るとは、そういうことだ。

 淀んだ空気は、人の心(カルチャー)も体(行動)も病ませる。組織のマインドやカルチャーを根腐れさせないためには、窓を開け続けて外を知り、新鮮な空気を取り入れ続けることが欠かせないのだ。

社会のことも考えた企業活動を

 ときには自社の利益優先の思考を捨てることも必要だ。

 たとえば昨今の「テレワークを廃止して完全出社に戻す」潮流についても、筆者は社会との対話が足りていないのではないかと感じている。
 自社の効率や目先の生産性だけを重視し、通勤ラッシュに加担し続ける。かたや鉄道会社は労働力確保の問題もあるのか、減らした本数や車両数を元に戻そうとはしない。通勤ラッシュは悪化の一途。企業のそのような「自社さえよければよい」姿勢に筆者はモヤモヤする。

 このような意識が強まれば社会全体の流動性も柔軟性も低くなり、皆共倒れになるのではないか。他者を蹴落として自分だけ勝ち上がる。そのようなゼロサムな文化を、そろそろ社会全体で終わらせなくてはいけない。