三菱・三井・住友 揺らぐ最強財閥#4Photo:Steve Chenn/gettyimages

「組織の三菱」と呼ばれてきた三菱グループですら、結束が揺らいでいる。2023年度に「御三家」の三菱UFJフィナンシャル・グループと三菱重工業が、同じ御三家である三菱商事の株式を売却するという衝撃的な出来事が起きたのだ。特集『三菱・三井・住友 揺らぐ最強財閥』の#4では、三菱グループ主要11社が持ち合う政策保有株式と社外取締役について、13年度から11年間の変遷を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

「同じグループだから」は通用しない
政策保有株式を次々と手放す三菱グループ各社

 日本「三大」財閥系企業グループである三菱、三井、住友の中で、最もグループ内の結束が固いといわれているのが三菱グループだ。そのシンボルが、三菱グループの社長・会長で構成する「三菱金曜会」。三菱グループのあるOBが「スリーダイヤを守るために結束するのが金曜会」と称するほど、三菱グループ「鉄の結束」を象徴するものである。

 その金曜会がスリーダイヤを守るために号令を掛ければ、三菱グループは結束して行動してきた。

 車は三菱自動車、ビールはキリン、生命保険は明治――。金曜会傘下にある三菱広報委員会は1960年代、グループ企業の資本を強化するため、三菱グループの社員に対して系列企業の商品の購入を呼び掛ける「BUY三菱」運動を推進した。

 また、三菱自動車が2000年代初め、リコール隠しや大型車のタイヤ脱落事故など度重なる不祥事で経営危機に陥った際、金曜会が三菱自動車への“支援”に動いたこともあった。その後、三菱「御三家」の三菱重工業、三菱商事、当時の東京三菱銀行が増資に踏み切り、三菱自動車は三菱グループのバックアップを受けて経営再建に取り組んだ。

 しかし、三菱グループの結束力は、もはや過去のものとなりつつある。とりわけグループ結束の証しであった株式の持ち合いは昨今、大幅に解消されてきている。

 大きな契機となったのは、東京証券取引所が18年に改訂したコーポレートガバナンス・コードだ。

 東証は上場企業に対して、政策保有株式について保有目的や、保有適否の検証、縮減方針などを開示するよう求めた。コーポレートガバナンス・コードを後ろ盾に、特に海外の機関投資家や「物言う株主(アクティビスト)」は、政策保有株の売却に圧力をかけた。その圧力にさらされた三菱グループの各社は、保有するグループ企業の株式を次々と売却していった。

 そして「組織の三菱」が崩壊の危機に直面していることを象徴する衝撃的な事件が起きた。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と三菱重工業が23年度、同じ御三家の三菱商事株を売却したのである。ある三菱グループの首脳は「同じグループだから株を持つ、という理由だけでは今の時代で通用しなくなった。三菱グループの“血のつながり”は完全に薄らいでいる」と明かす。

 三菱グループの結束はどこまで弱まっているのだろうか。そこでダイヤモンド編集部は、13年度、18年度、23年度の三菱グループ主要11社の政策保有株と社外取締役・社外監査役の“持ち合い”を徹底調査した。

 調査対象としたのは、金曜会に所属する24社のうち、序列が最上位にある三菱UFJ銀行、三菱重工業、三菱商事の御三家に加え、世話人会に所属する主要11社。各社の有価証券報告書に記載された大株主、社外取締役・社外監査役、政策保有株を調査した。

 三菱UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行は親会社であるMUFG、同じく三菱ケミカルは三菱ケミカルグループ、東京海上日動火災保険は東京海上ホールディングスを対象とし、上場していない明治安田生命保険は対象から外した。

 次ページでは、三菱グループの現在の序列を明かすとともに、主要11社の政策保有株と社外取締役・社外監査役の持ち合いの推移を紹介する。主要企業の中には、グループ企業の株式を全て手放した企業も存在した。またグループ各社が手放さない、“生き残り”銘柄も明かす。