多様な働き方の実現に必要なICT環境の整備――オリンパス株式会社
オリンパス株式会社(以下、オリンパス)は、本社機能を新宿に、R&D部門を八王子に置いていた。しかし、今年(2024年)4月に、それらを八王子に集約するかたちで、6500人が働くグローバル本社としての統合・移転が行われた。現在、全7棟の対象エリアのうち、約40%の改修が完了している。
メディカル事業にリソースを集中させ、グローバル・メドテックカンパニーを目指すオリンパスが、統合・移転とともに推進した「働き方変革」の柱は、ハイブリッドワークやフリーアドレスなどの実現により、多様でオープンな働き方が社員に自然と浸透する環境づくりを徹底的に進めることだった。
村田 研究職の方は自席で集中して作業することを好むので、一般的に、R&Dは固定席が多いのですが、オリンパス様はフリーアドレスを中心に採用するとのことでした。こうした大きな決断を下すのは簡単ではありませんが、経営層の方々が本気度をはっきり示していたこと、その思いを全従業員の皆様が共有していたことが成功のカギになったのだと思います。
フリーアドレスの実施にあたって、社長室も個人専用の役員室もなくし、共用の役員執務室を必要に応じて予約するスタイルです。さらに、ハイブリッドワークの推進により毎日出社することがなくなったため、それまで各組織内で占有していた様々なオフィスのリソースを組織をまたいで共有し、効率良く運用することが可能になりました。一方で「メンバーはどこにいる?」「ミーティングはどこを使ったらいい?」といったことの答えを可視化する必要性も生まれ、そのソリューションとしてICT環境を整備したのも大きな特徴です。
オリンパスは、「スマートオフィスナビゲーター」で、メンバーの居場所やスケジュールを把握し、「スマートルームズ」で会議室の空き状況の確認や予約をスマートフォンで行うことを可能にした。しかも、それだけではなく、従業員の属性・位置情報をもとに、「異なる部署の従業員がどの程度交流しているのか」を把握できるかを検証中だという。「スマートオフィスナビゲーター」のメリットは、従業員にとっては「便利であること」、企業側にとっては「事業成長ためのデータを得られること」といえるだろう。
村田 オリンパス様の経営層の方々は、従業員が組織の壁を越えて、対面でコミュニケーションを取ることを望んでいました。それが新製品の開発やさらなるイノベーションの創出につながるからです。ファシリティマネージャーなどがデータを分析し、部署をまたいで協力し合うイベントを企画することもあるようです。