オフィス構築の成功の秘訣は、社内の意見調整

 これら3社の事例を見ると、内田洋行がクライアントの「働き方変革」の方向性を見定め、オフィス構築を行うメンバーと深い意思疎通を図っていることがわかる。様々な企業とプロジェクトを進めるなかで、髙橋さんと村田さんは、どのような壁にぶつかり、どう解決しているのだろう。

髙橋  難しいのは、「多様な働き方」といっても、求めている多様化の度合いが、企業によって異なることです。そのあたりは、各社の企業理念をはじめ、時間をかけてヒヤリングしていく必要があります。

 気をつけなければいけないのは、経営層と現場間の意識や要望のズレです。そこをおざなりにしてしまうと、プロジェクトが進んでから“ちゃぶ台返し”になることもあるので、私たち内田洋行は、皆様のコンセンサスに齟齬がないようにしています。

村田 髙橋の部署がおつきあいするのは先方社の総務部が中心ですが、私たちはIT部門とのおつきあいが深くなります。IT部門はネットワークのセキュリティについて深く考えなければいけませんから、どちらかと言えば、保守的な姿勢になりがちで、そのため、変革を強く求める総務部との間に温度差が生じることもあります。

髙橋  また、大規模なオフィス構築では、ほとんどの企業がプロジェクトチームを組みます。通常、プロジェクトチームには、役員の方、総務の方、IT部門の方が入りますが、人事部の方が加わることも重要です。「働き方を多様化しよう!」と宣言して新オフィスをつくっても、従来の就業規則に縛られていたら「変革」は望めません。オフィス構築に合わせた就業規則を柔軟に考えられるように、人事の方にもプロジェクトチームに入っていただくことが大切だと思います。

「オフィスを変えることで働き方の多様化を目指したい」という思いを持ちながらも、予算や人材などのリソースを確保できない企業も少なくない。また、「変革」の効果が見通せなければ、「オフィスのリニューアルに投資するのは難しい」といった声もあがるだろう。

村田 大企業の場合、全面的なオフィスのリニューアルとなると、数千人規模の従業員が物理的な移動の対象となるので、簡単には決断できません。ですから、まずは、少人数の部署で試してみたり、社内の小スペースをリニューアルしてみたりして、その効果を見てから大規模リニューアルに踏み切るのも方法のひとつです。

髙橋 什器について言えば、私たち内田洋行では、「 TrendRent® (トレンドレント)」という登録商標でハイブリッドワークに適した家具のレンタルサービスも提供しています。予算を割けない場合は、レンタルで試したうえで、導入を考えるのもよいかと思います。