「自分で考えろ」と言って選手に時間を与えるのは、2年半という短い期間しかない高校野球にとってはかなり遠回りな作業です。促成栽培とまでは言いませんが、結果を早く出すことだけを考えれば、自分が“されてきた”指導をベースにやらせたいことをすべてやらせるという安易な方法を選択しがちなのです。

 しかし、チームというのは本来、選手と一緒に作っていくものだと私は考えます。選手の意見にも耳を傾けるべきで、ときには議論を戦わせることも必要でしょう。あるいは選手に委ね、選手たちだけで重要事項を決定させるような、“精神的なゆとり”も指導者は持っていなければなりません。

 大切なのは、選手あるいはチームがいかに成長していくか。成長とは、目先の結果である勝ち負けだけではなく、前述したように高校野球を通していろいろな経験をすることであり、その価値自体を高めていくことです。このような基準、視点を持っていれば、上から押し付けるような指導には決してならないと思います。(『Thinking Baseball』森林貴彦著/東洋館出版社)

「明るいチーム」をつくるのは、目先の結果だけではない、長期的な視点で主体性を持った人材を育てるため――森林監督の「成長至上主義」の考えは、スポーツだけでなくさまざまなチームの指導にあたるリーダーに、その大切さを教えてくれます。