とりわけ高齢居住者が多いマンションでは合意形成が難航しがちである。建て替えにかかる費用ほどではなくとも、大規模修繕でも数百万円は必要になることが多い。これも年金で暮らす高齢者にとっては大きな負担だ。

 高齢者の中には「将来のための修繕と言われても、自分はあと何年生きられるかわからない。いま困っているわけではないのでこのままでよい」と主張する人もいる。大規模修繕にも反対する高齢者は少なくない。

高齢者だらけのマンションから
逃げ出す住民たち

 建て替えや大規模修繕を困難にする要因は、高齢居住者の増加以外にもある。「2つの老い」が進むマンションでは空き家が増えているのだ。

 総務省の住宅・土地統計調査(2023年10月時点)の速報集計によれば、空き家総数899万5200戸のうち44.9%にあたる403万6800戸がマンションを意味する「非木造共同住宅」だ。その77%である310万8800戸では賃貸用マンション物件が空き家となっているのである。国交省の調査によれば、1979年以前に建てられたマンションの68.8%に空き家が存在する。完成時期の古いマンションほど賃貸や連絡先不明の空き家になっている割合も大きい。