高齢居住者が増えるにつれて、近年は住み慣れたマンションを終の棲家にしたいという永住意識も高まっている。70歳代が79.2%、80歳以上は79.3%だ。だが、こうした高齢住民の永住志向は、老朽化したマンションの建て替えの大きな阻害要因となっている。近年、床面積を新たに生み出せる容積率が縮小傾向にあることに加え、建築資材の高騰で1世帯あたりの建て替え負担額は上昇している。国交省によれば2017~2021年の平均額は1941万円だ。

 一方で住民側といえば、デフレ経済の長期化の影響で賃金上昇が抑え込まれ、十分な老後資金を貯められないまま定年退職したという人が増加傾向にある。年金収入が中心の暮らしになってから2000万円近い資金を求められても、簡単に「イエス」とはならないだろう。こうして、高齢居住者が多いマンションほど建て替えの合意は得られにくくなっていく。区分所有者が多いタワーマンションはなおさらハードルが高くなりそうだ。

建て替えどころか
大規模修繕すら困難

 高齢住民の増加は、建て替えどころか大規模修繕も難しくしている。