さらに、大相続時代に突入すると予測されていますが、都心部の不動産が一気に市場に放出されることは原則ありません。これは、高齢者の資産が子ども世代に移転する際、都心の土地や建物は売却されるよりも、相続して再度利用されるケースが多いためです。

 結果として、供給が急増することはなく、不動産価格の下支え要因となっています。私の感覚では10件相続が起きても、実際親の住居を売却してしまう確率は3割程度と考えています。つまり、7割は売らないのです(その7割の中には配偶者が相続するため、住み続けるというものも含まれます)。

 東京都の高齢人口が増えるのは事実です。東京の現在の65~74歳は約130万人、75歳以上は約181万人の合計で約311万人。そして東京は、2050年までに65歳以上人口は右肩上がりで425万人、75歳以上人口は251万人にまで増大すると推測されています。65歳以上の人口は100万人超増えることになりますので、大相続時代による人口減少が都心の地価に影響を及ぼすのは2050年以降など、もう少し後ろ倒しになる可能性が高いと考えています。

 また、「空き家」の観点からも、東京の住宅需要が堅調であることが予想できます。例えば、東京都は今から約25年前の平成10年、総住宅数566万戸で空き家率は11%でした。それが、令和5年には総住宅数819万戸で、実に4割超の増加となっています。しかし空き家率に変化はなく、11%のままです。

 つまり冒頭に申し上げた通り、「人口が減少するがゆえ」に、地方が衰退するのに反比例して都心の人口が増え続けるため、都心部の地価は上がる(もしくは下がらない)ということなのです。地方創生が本当に実現したら、東京の地価高騰も収まる可能性はありますが。

ポイント(3)日銀の利上げが
不動産市場に及ぼす影響とは?

 最後に利上げについて。日銀の利上げは住宅ローンの金利上昇を引き起こし、住宅購入を抑制する要因となります。

 しかし、現在の状況を見ると、日銀は継続的に利上げを進めることは難しいのではないでしょうか。7月末の利上げも一時的な措置にとどまる可能性が高いです。これは、急激な利上げが経済全体に悪影響を及ぼすことを日銀が理解しているためです。今後の選挙結果にもよりますが、当局としてはタカ派になりづらい状況だと思います。