バスの運転手写真はイメージです Photo:PIXTA

ジャーナリストの河合雅司氏によれば、2030年には路線バスの維持に必要な約12万人の運転手に対して約9万人しか確保できず、運転手不足問題が深刻化しているという。過疎地域のみならず大都市圏でも路線バスの廃止や減便が静かに波及しており、日本列島の「陸の孤島化」は待ったなしの状況だ。※本稿は、河合雅司『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)の一部を抜粋・編集したものです。

路線バス廃止が各地に波及
迫り来る交通網崩壊の危機

 鉄道と並び、地域の足として最も身近な存在である路線バスも廃止や減便が広がっている。これも、日本崩壊の始まりを端的に示している。

 路線バスの縮小はいまに始まった話ではない。国土交通省の資料によれば、2008年度から2022年度までに2万733キロが廃止となった。

 これまでは過疎エリアが中心で、人口減少やマイカーの普及に伴って利用者が減り、慢性的な赤字に陥って持続できなくなるというのが主たる理由だったが、近年は事情が変わってきた。東京23区を含む大都市圏でも路線の廃止や減便、始発時刻の繰り下げ、終バス時刻の繰り上げが目立つ。

 大阪府富田林市などで運行する金剛自動車に至っては、2023年12月20日をもって路線バス事業そのものを廃止した。一部は他の事業者に引き継がれたが、大都市の近郊でもバスが事業として成り立たなくなってきている。

路線バス運転手不足の
背景にあるのは少子高齢化

 大都市圏も含めて路線バス事業が行き詰まりを見せ始めた背景には、深刻な運転手不足がある。