さらに1時間かかるところを10分ぐらいでやってのける。それができるかどうかを考える。
その計画を実行していく場合も孫はきわめて緻密である。
新たに受験勉強に取りかかった泰蔵は、計画表の進行状況を正義に見せた。緑色は計画どおりに進んだところ。怠けてしまったところは赤色、途中までのところは黄色で印をつけた。泰蔵は1日18時間勉強した。
兄の正義がホーリー・ネームズ・カレッジやバークレー時代、寝るとき以外はすべての時間を勉強に注ぎ込んだことを泰蔵は知っていた。
順調と思えた弟の計画表
孫は「分かっていない」と一喝
(兄貴に負けんぞ)
泰蔵は猛勉強した。はじめのうちこそ赤色か黄色のところが多かったが、次第に緑色が増えてきた。
泰蔵は、その進行表を兄に見せた。
一瞥した兄は弟を叱った。
「おまえは勉強というのがわかっていない」
今度こそ、ほめられこそすれ、叱られることはないといささか自信を持っていた泰蔵は眼を白黒させた。そもそも兄に一喝された理由がわからない。
「いいか。黄色が問題なんだぞ」
サボって赤色に塗ってある箇所は問題にしなかった。人間誰しもいつも完璧とは限らない。できないときもある。