異常な円安を立て直すため
日銀は何から着手すべきか

 とはいっても、市場レートと購買力平価の乖離は、さほど大きなものではなかった。2015年から2019年には、市場レートは、購買力平価より1割ほど円安だった。

 これが一変したのが、2022年だ。市場レートが購買力平価より円安であることに変わりはないのだが、両者が大きく乖離し、市場レートは、購買力平価に比べて大幅に円安になったのだ。

 IMFによる2024年の推計値では、購買力平価が1ドル=91.378円であるのに対して、市場レートは148円だ。市場レートと購買力平価がこれほど乖離したのは、1980年代前半以来のことだ。この意味で、現時点の円安は「歴史的」なのである。

 こうなったのは、もともと物価上昇率の差がある上に、市場為替レートが急激に円安になったからだ。これは、世界の中央銀行が金融引き締めに転じた中で、日銀だけが過度な金融緩和を継続したことの結果だ。

 この状態は、日本経済にさまざまな問題を引き起こしている。この惨状をどう立て直していくかが、日銀に課された大きな課題だ。