最近の日本の消費者物価には、国内の賃金上昇によって引き起こされるコストプッシュ的な動きも見られる。しかし、輸入価格の動向が消費者物価指数(CPI)に大きな影響を与えることも間違いない。だから、賃金上昇に伴うコストプッシュ要因によるインフレを抑制するためにも、輸入価格の引き下げが重要な課題だ。
そのために、為替レートを正常な水準に戻す必要がある。ユーロやポンドがコロナ前の水準に戻ったことを考えれば、円をコロナ前の水準に戻すことは、決して不可能ではないと考えられる。
円安で企業の利益は増えるが、それは帳簿上のものに過ぎない。そして、企業利益が増える基本的な原因は、輸入価格の上昇分を消費者物価に転嫁することにある。つまり、円安による企業利益増は、消費者の犠牲において生じるのだ。生産性の向上による健全な利益増ではない。
しかも、そうしたメカニズムで利益が増えるために、企業が技術開発に取り組まないという問題がある。日本経済の長期的な停滞は、これによって引き起こされた。