三四郎は勉学をそっちのけで、この知性豊かな、美しい女性のことをずっと考えているが、結局、彼女のことはわからない。
美禰子の態度は「澄むとも濁るとも片付かない空の様な」ものだと思い、むしろそれに満足感すら覚える。けれどもときには「あの女から馬鹿にされている様でもある」と疑心暗鬼にもなってしまう。
そうこうするうちに、美禰子は結婚してしまう。それに対して三四郎が何を思うかは、彼自身もわからないようである。
漱石が描写した東大は
ホモソーシャルな男の世界
三四郎は他にも女性と出会うが、やはりまともな意思疎通はできない。
九州から東京に向かう途中の列車で会った若い女性とは、旅館で一晩ともに夜を明かすことになるが、布団の中央に自分で境界線を作り、彼女に触れることもないどころか、名前を聞くことすらしない。
美禰子とともに頻繁にキャンパスなどで会う、野々宮宗八の妹よし子のこともよく理解ができない。よし子と話しながら「東京の女学生は決して馬鹿に出来ないものだと云う事を悟った」のに、対等な会話をするわけでもない。