「やってみたい」気持ちに
自らふたをする子どもたち

 子どもに何かの「体験」をさせようと思えば、経済的な負担に加えて、送迎などの時間的・体力的な負担も重くのしかかる。比較的安価に通える地域クラブやボランティア主体の活動においては親の付き添いが必須であったり当番制を設けていたりすることも多い。

 その負担は、2人の大人が子育てに関与できる状況よりも重く感じられるだろうし、いわゆる自分の「実家」の助けが得られない場合はなおさらだ。小西さんの「親が2人いたら、色々と手分けできるんですけど、1人だとそれができない」という言葉によく表れている。

書影『体験格差』(講談社現代新書)『体験格差』(講談社現代新書)
今井悠介 著

 困りごとがあっても助けを求めづらい、地域や近所の人たちに苦しみを打ち明けられていない、という場合も多いようだ。貧困に加えて、孤立の問題も深い。

 池崎さんの話からは、子どもがやってみたいことを言わ(え)ず、「うちは無理だよね」とあきらめている様子が窺える。

 こうした状況を生きる子どもたちに「体験」の機会を届けるためには、「やってみたい」という気持ちが明確に表れている場合に、それに対して経済面を含めたサポートをする、というだけでは必ずしも十分ではない。

 一度ふたをしてしまった「やってみたい」という気持ち自体に寄り添うこと、あるいは「やってみたい」何かを見つけようとする好奇心を育み直すこともまた大切になってくるはずだ。