どんな目標にするかは完全に自由だったが、ひとたび目標が決まったら、そのコミットメントには拘束力が伴うことが条件とされた。つまり、目標額に到達するか、目標の期日になるまでお金は受け取れないということだ。
1年後、研究グループがコミットメント口座を開設した貯蓄者たちの平均預金額を、通常口座を持つ対照群と比較した結果、コミットメント口座の貯蓄者のほうが81%も高かったことがわかった。
自分の意志の弱さを知っているなら
未来の自分の行動をいま縛るべき
われわれがこの研究に注目したポイントは、被験者がだれひとりとして口座開設を強制されていなかったことだ。実際、だれも口座を開設しなかったとしても不思議はなかった。被験者たちには金銭的インセンティブはいっさい与えられていなかったし、急な出費に対応できなくなるという不都合もあり得たからだ。
それなのに、コミットメント口座開設の選択権を与えられた被験者の4分の1から3分の1が実際にコミットメント口座を選択している。これほどの人たちがコミットメント口座を開設しようと考えたこと自体、注目すべき発見であった。なぜなら、一定数の貯蓄者が、自分の意志の弱さゆえに、未来の選択を担保するのが難しいのを十分に認識していたことになるからだ。