「頭痛が痛い」「馬から落馬する」も
場合によっては不自然さが軽減

 ダメな重言の例としてよく引き合いに出されるのが、「頭痛が痛い」と「馬から落馬する」だ。しかしこれらも場合によっては不自然さが軽減する。たとえば、「長年悩まされてきた持病の頭痛が今朝はひどく痛い」とか「暴れ馬から落馬した」とか言えば、私の感覚ではかなり自然になるように思う。つまり情報量が増えれば、意味の重複があまり気にならなくなるようだ。

 また、私の感覚では、シンプルに「頭痛が痛い」と言うのは変だと思うし、同様に「胃痛が痛い」もかなり変だ。しかし「偏頭痛が痛い」とか「腰痛が痛い」、「筋肉痛が痛い」、「神経痛が痛い」あたりになると「別によくね?」となる。

 さっきの理屈で言えば、「頭痛」「胃痛」は「頭(あるいは胃)が痛いという出来事」に取りやすく、「偏頭痛」「腰痛」「筋肉痛」「神経痛」の方はよりモノに近いのかもしれない。

 あと、「馬から落馬する」タイプの言葉がすべて不自然だとは限らない。個人的には、「会社に入社する」「車に乗車する」「山から下山する」「部屋に入室する」などは、けっこう普通に言う気がする。

 さらに、情報量を増やして「第一志望の会社に入社した」とか「迎えに来た車に乗車した」、「富士山から下山した」、「面接室に入室した」などと言えば、私はほとんど不自然さを感じない。