「なんで勉強しなくちゃいけないの?」子どもにそう質問されて、返答に困った経験はないだろうか。子どもの可能性を広げ、豊かな人生を歩めるように、親はどのように子を導くのが正解なのか?親子で考えたい勉強の意味、そして教育の重要性についてAPU学長の出口治明氏が解説する。※本稿は、出口治明『「教える」ということ 日本を救う、[尖った人]を増やすには』(角川新書、KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。
「好きこそものの上手なれ」
興味関心がなければ身につかない
以前、八重洲ブックセンター(東京都)で、拙著『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)の出版記念講演会が行われたときのことです。講演後の質疑応答で、参加者の女性から、「私は今36歳です。この時期に読んでおいたらいい本があればご紹介ください」という質問を受けました。
僕の答えは、こうです。
「何でもいいんです」。
なぜ、何でもいいのかといえば、興味のない本を読んでも頭に入らないからです。
最近の研究では、「最高の先生が最高の授業をしても、聞いている学生が興味をもっていなかったら、単位を取った後は授業内容をほとんど忘れてしまう」という結果が出ているそうです。
僕が続けて、「どんなジャンルに興味がありますか?」と聞き返すと、彼女が「神話とか民話など民族文化に惹かれます」と答えたので、僕は『世界の神話』(沖田瑞穂(著)、岩波ジュニア新書)と、『石の物語』(ジン・ワン(著)、法政大学出版局)の2冊を紹介しました。
「好きこそものの上手なれ」で、どれほどいい本を薦めても、本人に興味や関心がなければ、身につかないのです。