エゴイズムなしに生きることは不可能ですが、悪意なしに生きることは可能です。したがって、エゴイズムは動物的ですが、悪意は悪魔的である、と彼は表現します。その意味において、悪意はエゴイズムよりもより悪いことなのです。
「生まれつき悪意が強い人」の
性格を変えることはできない
では、どのようにして人間の心に悪意が宿るのでしょうか。ショーペンハウアーは、大変身も蓋もない回答を示しています。すなわちそれは、本人の性格に由来するものである、というのです。
人間には誰しも生まれもった性格というものが存在します。それは、私たちに与えられた身体がそうであるように、自分で選ぶことはできないし、そっくり交換することもできません。そうした性格によって、エゴイズムがどれくらい強いか、悪意がどれくらい強いかも決まってくるのです。
では、生まれつき悪意が強い人はどうしたらいいのでしょうか。ショーペンハウアーによれば、性格そのものは、後から変えることができません。つまり、悪意をもって生まれてきた人は、死ぬまで一生悪意を持って生きるのであり、どれだけ周りが説得したところで、自分の性格を刷新することはできないのです。