ショーペンハウアーは、通常、そうした悪意は理性によって押し留められ、表には出てこないと考えました。ところが、日常のいたるところに潜んでいる、制御の難しい悪意もあります。それが、嫉妬です。

 嫉妬は、自分にないもの、自分より優れたものを持っている人を、羨む気持ちです。もっとも、ただ羨ましいと思っているだけなら、それは何も問題ではありません。

制御が難しい悪意の正体は
「嫉妬」だった

 嫉妬する人は、羨ましいと思う人と自分を比較し、自分が何かに欠けていたり、相手よりも劣っていたりすることは、不公正であると考えます。

 だから、相手が自分よりも優れていることが許せず、相手をちょっとでも引きずり下ろしたい、ちょっとでも嫌な思いをさせたい、と思うのです。

 たとえば、「私」が人から好かれない性格だとしましょう。それに対して、目の前に、いつも周りから人気の人がいるとします。このとき「私」は、その人気者が、自分に欠けているものを不当に占有しているように感じます。