Joyが、楽しいフリー空間を実現したキーポイントは、シート背面とラゲッジフロア面の処理にある。背面とフロアをシートと同一のチェック柄ファブリックで仕立てたのだ。基本的にそれだけ。いままでブラック仕上げが一般的だったラゲッジをチェック柄にしただけで、こんなにもイメージが変化するとは、本当に驚いた。
もちろん、リアゲートを開けて腰掛けたときにフロア面が最適な高さになるよう、フロア後端を通常のN-BOX比で80mm嵩上げしたり、シートをダイブダウンした折にフラット空間になるよう調整。そしてシートフレームの凹凸を感じさせないプレートを追加するなど、さまざまな工夫を凝らしている。
だが何よりチェック柄の効果は大きい。これだけで“荷物のスペース”が、“人が憩うスペース”に変身した。
その空間は、フロントシートを最も前にスライドさせた状態でも前後長は161cmだから、流行りの車中泊には適さない。でも気持ちよさは絶大。後席シートバックを前倒しするだけで、瞬時にテラスに変身する手軽さも魅力だ。採用したチェック柄ファブリックは、汚れが目立たず、しかも遊び心を感じさせるカラーミックス糸が採用され、表面はNシリーズ初の撥水処理済み。うっかり飲み物をこぼしても安心だ。ちなみにフロア後端を80mm上げることで生まれたスペースは、フロアアンダーボックスとして活用できる。お気に入りの折りたたみ椅子を収納するのにぴったりの広さがある。
N-BOX Joyは、積極的にアウトドアフィールドに出かけるアクティブ派だけでなく、多くのユーザーに従来とはちょっぴり違うクルマの楽しみを提供してくれる日常生活に寄り添った存在。メーカーはユーザーターゲットを「20代の若者、二人の生活を楽しむプレファミリー、子離れした50-60代の夫婦」と説明するが、N-BOXの新たな主軸に成長する気がする。N-BOX本来のユーティリティをほぼそのままに、楽しさをトッピングしたJoyは実に魅力的である。
スタイリングはちょっぴり
タフなファンクショナル造形
スタイリングは、気楽に頼れる道具感を大切にしたファンクショナル造形。ヘッドライトは標準仕様の丸型とは違い、ランプユニット自体を一段と際立たせツールライクな“目”に仕上げている。前後バンパーは泥や傷つきが気にならないボディカラーと黒のコンビネーション仕様。フロントグリルは精悍なブラックタイプになる。ちなみにフロントマスクはディーラーopで“アクティブフェイスパッケージ”が選べる。アクティブフェイスパッケージは、中央にHONDAのロゴを配したグリルと、LEDフォグライトのセット。フォグのカラーはオレンジとホワイトが選択でき、価格は約10万円。なかなかハンサムで好印象だ。
エンジンのラインアップは自然吸気(58ps/65Nm)とターボ(64ps/104Nm)の2種。それぞれにFFと4WDを用意している。Joyを高速ツーリングを含めたファーストカーとして使いたいと考えているユーザーには、ターボの設定は朗報である。自然吸気のパフォーマンスも街中中心なら十分なレベルだが、やはり走りの余裕という点でターボの効果は大きい。