「若さは無敵」開封市は観光を盛り上げようとした
すると、開封市もこの静かなブームを利用して「開封観光」を盛り上げようと画策。「若さは無敵」「人生にはパッションが必要、青春の血が騒ぐ」などというスローガンを掲げて、市内観光地の一部を24時間制とし、自転車でやってきた大学生に対して夜間入場料を無料にして開放した。さらに、増え始めた自転車大学生を沿道で迎えたり、彼らに無料の朝食までふるまうボランティアも出現し始めた。
それが話題を呼び、週末の夜に鄭州から自転車を漕いで開封に向かう人たちの数が増え始めた。一説によると、鄭州ばかりではなく、お隣の山東省や、さらには直線距離で600km離れた北京などからも、ブームに便乗する形で自転車で開封を目指そうとする人たちが現れたという。
政府系メディアの大代表である中国共産党中央委員会機関紙「人民日報」や国営テレビ局「中央電視台」なども、「若者たちの青春」などと褒め称えていた。週末を利用して開封にやってきた若者たちは夜間開放された観光地で夜を明かすようになった。その一方で観光地の入口にはシェア自転車が大量に乗り捨てられ、沿道にも大量のゴミが出現するようになった。
行政当局はその盛り上がりぶりに、注意を呼びかけ始めた。交通警官がマイクで、走行中の自転車軍団に向かって、「夜間の車道は危ない」「このままUターンして戻れ」などと叫ぶ動画もアップされていた。とはいえ、この大群の一部でもそれを聞き入れてUターンしようものなら、もっと大混乱になるのでは……と思われたが、現場はそれすらも考慮できないほどの慌てぶりだったということだろう。
そしてその数がふくれ上がった結果、11月8日夜にはとうとう20万人を超える人たちが開封を目指したといわれるほどの騒ぎと相成った。
さすがにこの「異常事態」に慌てた行政関係者は9日になって、両地を一直線に結ぶ鄭開大道への自転車乗り入れを一時禁止とした。さらにシェアサイクル運営各社にも働きかけ、シェアサイクル企業が共同で「区間をまたぐ利用は区間を超えた時点で警告を行い、警告後3分で自転車を自動ロックする」などという荒っぽい措置を発表した。
おかげで、9日夜になると前夜のような銀輪の大群は姿を消し、この「自転車大移動ブーム」は一挙にしぼんでしまった。