「青春がなんだ」「開封の観光には役立っていないのでは」の声も

 この事実上の「禁止令」とともに、ネット上の評論はそれまでと一転した。

「学生たちの本分は勉強。彼らは親たちが出してくれたカネを使って浪費している」とか、「若さは無敵だが、だからといって他人の生活を混乱させてもいいわけがない」とか、「青春の価値は無限だが、彼らの青春は安っぽい」などという批判が並び始めた。

 また、政府系メディアでも、若者たちの郊外活動や多少の消費は奨励すべきだが、それは無防備、無秩序に行われるべきではなく、学校と学生が話し合い、ナイトツーリングにしても決められた時間内に決められた路線を走るよう、またきちんとした組織や保障がなされたイベントとして行われるべきだ、などという「もっともらしい」意見も出現した。

 さらに「開封自転車貧乏旅行」と名付けられたこのブームを、「それが開封の旅行政策にとって何の得になるんだ」という批判も飛び出した。電車やバスなどの公共移動手段を使わずに50kmを疾走する連中がやってきたところで、開封にはお金を落とさないじゃないか、というのである。さらには、無料の朝食をふるまって歓迎するとはなにごとぞ、という意見まであった。

 また、ネット上には「青春がなんだ。結局彼らは大勢に流されているだけではないか。それを褒め称える連中はどうかしている」という声もあった。「連中はそれを自由だと勘違いしているのかもしれないが、ぼくからすれば、彼らはただのアリの大群の中のアリンコだ。盲従しているだけだ。青春を謳歌しているなんて思い込むことがちゃんちゃらおかしい」という手厳しい声も出ていた。

深夜に自転車を走らせるのは、若者の「聞き分けのいい反逆」?

 それにしても、20万人というのはものすごい数である。メディアの報道によると、鄭州には現時点で高等学府が74校あり、2023年の統計で175万人を超える学生が学んでいるという。大学生の数だけで、日本のほとんどの都市の人口を軽く超えていることになる。

 河南省の農村出身で、1990年代終わりに北京の大学で学んだコラムニスト、張豊さんは、「ぼくが大学生になろうとする頃、鄭州には数えるほどの大学しかなかった」と振り返っていた。

 その張豊さんは、深夜に開封を目指して自転車を走らせた大学生たちは、決して危険や他人の不便を顧みないわけではなく、逆に「聞き分けの良い反逆」を演じてみせただけだと述べている。

「過去20年間、中国の高等学府は狂ったように入学枠を拡大し、合併し、各地で大学城が作られた。だが、そんな大学城はとても計算されつくしたもので、生活臭も社会臭もすべて消され、書店すらほとんどなく、学生たちが参加できる学外の公共活動もなかった。そこにあるのは本当の意味での『コミュニティ』ではなく、商業価値すらもなく、すべてが透明でクリーンな、禁欲生活だった」

 そういえば、この開封行き大群が大騒ぎになる直前の10月末、ここ数年、各地の都市で盛り上がりつつあったハロウィーンの仮装パーティが今年、あちこちで警察による規制を受けた。「変わった格好をしている」だけで呼び止められ、公安の車に載せられたという報告が次々にネットに上がっていた。