「批判する人」をやめる方法
スイッチング・クエスチョン
「それなら損切りをして、さっさと引き上げたほうがよさそうだ」と私は提案してみた。
「とんでもない」とジョゼフが答えた。
「自分が『批判する人』になっていると気づいたら、それこそがコントロールを取り戻し、個人の力を発揮するタイミングなんだ。もちろん『批判する人』であることを認めないといけないが。
『批判する人』の立場で考えるか、『学ぶ人』の立場で考えるかを切り替える選択ができる。
この切り替えの方法を示してくれる特別なタイプの質問がある。
私はそれを『スイッチング・クエスチョン』と呼んでいる。
その日のスイッチング・クエスチョンはこうだ。
『彼についてほかの考え方ができないだろうか?』
『彼はなにを必要としているのだろう?』
その質問のおかげで、彼のことを価値のない人間だと考えたりせず、むしろ彼に興味をもつようになった。
『選択の地図』は、自己観察の全プロセスをシンプルなものにしてくれるんだ。ほかにも多くの選択肢があることに気づき、プレッシャーがかかる状況でも、もっと賢明な選択ができるようになる。
事態がうまくいっているときの選択は容易だ。試されているのは、プレッシャーがかかる状況でなにができるかだ」
ジョゼフの言葉のなにかがきっかけとなって、私は空港での妻との不愉快な時間を思いだしていた。
「衝突が起きるときはいつだって、『批判する人』が現れるような気がします。つまり、結局は両者がともに『批判する人』になってしまう。よくあることではないですか?」
「まさにそうだね。両者とも『批判する人』になってしまうと、すべてがエスカレートして、よい解決策が生まれる可能性は急ブレーキをかけて停止してしまう。そこで、100万ドルの価値があるヒントをきみに教えよう。
『2人の人間が衝突しているときは、自分が批判する人になっていると先に気づいたほうが、事態を好転させられる』」
2人の人間が衝突しているときは、
自分が批判する人になっていると
先に気づいたほうが、事態を好転させられる。
深呼吸と視点転換で争いを解消
身体のサインを察知し冷静に判断
それだ、と思った。グレースはけんかをしたあとでも、一瞬のうちに意地を張るのをやめ、心を開いてくることが多い。彼女のこの切り替え能力のおかげで、いつも大事に至らずにすんでいた。
グレースはこれを無意識にやっているのだろうか、それともなにか秘訣があるのだろうか、と何度も考えたことがある。彼女に尋ねたこともある。彼女はこう返した。