「ただ深呼吸をして、大局的にものごとを見るようにしているの。
つまり、自分が正しいと証明するよりも、2人の関係を維持するほうが大事だということを忘れないでいるのよ」
ジョゼフのテクニックを使えば、選択によってグレースのような切り替えを行えるようになるはずだ。
そうなれば、職場での敵であるチャールズとの勝負で優位に立つことができるだろう。私は慎重にジョゼフに告げた。
「試してみようと思います。なにから始めればいいですか?」「まずは身体の感覚に気づくところから始めよう。ときには非常に微細なものもある。あごや肩が少し締まっているように感じるとか、いわゆる虫の知らせを感じるとか」
「ああ、(怒りで)逆毛が立つことがあります。あなたなら防御態勢と呼ぶでしょうね」
「その身体の感覚は、自身の状態に気づくヒントになる。そのタイミングで、『自分は批判する人になっている?』と気づくことができるのだ。
「学ぶ人の考え方」を身に着けて
「批判する人」をやめよう!
われわれは『学ぶ人』の状態で行動してこそ大きな効果が得られるし、満足感も得られる。もっとも臨機応変にものごとに対応でき、失敗しても立ち直りが早く、状況に順応でき、多くの選択肢をもてるのが『学ぶ人』でいるタイミングだ。
とはいえ、ときには『批判する人の道』を進むことがあっても心配はいらない。それが人間だ。だれもが経験することだ。ここ数年、マインドセット・プラクティスを実践している私でさえ、今でも1日に数回は『批判する人の道』を進んでいたりする。
だが少なくとも今は、自分を突き放して見つめることで、ひとりでに『批判する人の道』を行ってしまうことはない。
きみも自己観察力を鍛えれば、質問を切り替え、『学ぶ人』に戻ることがどんどんたやすくなるだろう。そうなれば事態は好転し、きみが求めている結果が得られるようになる」
「ずいぶん簡単そうに言いますね」
マリリー・G.アダムス 著、鈴木義幸 監修、中西真雄美 訳
「きみが考えているより簡単だよ。なぜなら、必要なものはすでにそなわっているんだ。スイッチング・クエスチョンを継続的に行えば、回復力のある自己観察力と、強健な『学ぶ人の考え方』を確立できる。きみは自分のなかの『批判する人』を排除し、それがもたらす混乱を払拭する能力を身につけられる。