時代の変化に取り残されないよう、教育も変わらなければいけない。「国際」を冠した中高一貫校が人気を呼ぶ一方で、「国際」をあえて外す学校も現れた。千代田国際中学の校長に就いた木村健太氏が、「学び」の在り方を変えようとしている。(ダイヤモンド社教育情報、聞き手/後藤健夫)
木村健太(きむら・けんた)
千代田国際中学校・武蔵野大学附属千代田高等学院校長
東京大学先端科学技術研究センター客員上級研究員
情報経営イノベーション専門職大学客員教授
広尾学園中学校・高等学校で医進・サイエンスコースを立ち上げ、学習者の主体性を軸とした研究的な学びを進めてきた。学外では、内閣府総合科学技術・イノベーション会議、経済産業省産業構造審議会、同省未来人材会議、同省「未来の教室」とEdTech研究会、科学技術振興機構次世代科学技術チャレンジプログラム、Tokyoサイエンスフェア(東京都科学の甲子園)等の委員を歴任。
Photo by Kuniko Hirano
校名から「国際」を外すという選択
――前回は、新しいコースと「ラボ」「プロジェクト」を中心にお話を伺いました。今回はもう一つの大きな変更点について教えてください。
木村 2025年4月から、千代田国際中学校を「千代田中学校」に、武蔵野大学附属千代田高等学院を「千代田高等学校」に変更する予定です。校名は変更しても、武蔵野大学の附属校であることには変わりはありません。同一法人としての全学部全学科への内部推薦枠もそのままですのでご安心ください。
――中高で名称をそろえるわけですね。ここ10年ほど、男女共学化とセットで校名に「国際」を付ける元女子校が相次ぎましたが、一度付けた「国際」を外す例は初めてかもしれませんね。
木村 今の社会では、日本を中心に海外に出て行くようなイメージの「国際化」という言葉はあまり使われなくなっています。代わりに、地球規模で考えるグローバル化という言葉が使われています。
海外大学への進学を考える小中学生が「どうも日本の大学はこれから駄目みたい。日本じゃないどこか海外の大学に行きたい」という発想をしているとしたら、それは大丈夫かなと少し心配です。「国際化」という言葉が生む勘違いを取り去り、当たり前のようにグローバルな視点を持てる環境をつくりたいのです。
――国際教育も、実態は英語教育だったりしましたからね。
木村 例えば難病の治療法を研究する場合、国という概念は関係なく、人類がいまだ解決できていない問題にアプローチするという視点で取り組みます。環境問題を考えてみても、日本だけで解決できる問題ではなく、地球規模の視点で考え、全世界的な取り組みが必要になります。校名変さらには、日本と海外というように分けるのではなく、人類レベル、地球レベルの視点で考えてほしいとの願いを込めています。
その上で、進路指導も本質的なものにしていきます。大学は教育機関であると同時に研究機関です。自分が学びたい、研究したい、地球レベルで貢献していきたい分野を模索し、その分野に強い大学を選ぶ。具体的にはどんな質の論文がどの程度の頻度で出ているのか、研究費や設備、教員1人当たりの学生数、教職員や学生のダイバーシティなど、自分が研究を進めるに当たり必要な情報を調べて選びます。その過程において、海外の大学も当然のように候補に挙がってくると思います。
――学校という仕組みの在り方にも踏み込むわけですね。
木村 はい。例えば、日本の学校には、集団を小分けした班(グループ)はあっても、シナジーを生み出しながら協働して取り組む「チーム」が少ないと感じています。メンバーそれぞれの強みを生かし、苦手を補い合って目標を達成するためのチームビルディングを生徒たちに経験してほしい。