前妻との間の子どもにも
配慮した遺言をのこそう

「まさかうちの旦那に限って」――そう思っているあなたにも、こうした事態が起こるかもしれません。私は年間100件以上の相続に関わっていますが、この事例のようなことが時々あり、2年に1件くらいは、「相続人の誰も知らない血のつながった兄弟が出てきた」というケースに直面します。

 この事例では、公正証書遺言がありましたから、遺留分である8分の1を請求されるだけですみました。遺言書がなければ、法定相続分である4分の1を渡さなければならなかった可能性が高かったでしょう。

 突然、前妻の子どもが登場して、空子がかわいそうだと思うかもしれません。しかし、空子が怨子や陰男の存在にまったく気づいていなかったということは、捨男は養育費をきちんと支払っていなかった可能性があります。前妻とその子どもは離婚後、苦労したのかもしれません。

 そもそも、陰男には法的に保障された遺留分があるのですから、遺産相続を主張するのは当たり前で、相続の際に1円ももらえないとなれば、争いになるのは当然だと思ったほうがいいでしょう。捨男は遺言で、前妻との子どもの存在に触れて、遺留分に配慮した財産分与をすべきだったといえます。

 実は、遺言で子どもを認知するという裏ワザがあります。これは「死後認知」と呼ばれるものです。たとえば次のようなケースがあります。

 Aさんは生前、妻と子どもたちに「俺の愛する家族はお前たちだけだぞ」とたびたび言っていました。そして妻と子どもたちもAさんのことを愛しており、Aさんは最期を看取ってもらったのです。