注意(きをつける)事項(ことがら)

一 此(こ)の証(ふだ)は健康(けんこう)保険(ほけん)の被(ひ)保険者(ほけんしや)であるという証(しるし)であるから大切(たいせつ)に持(も)つてゐなければなりません。

二 被(ひ)保険者(ほけんしや)は疾(びよ)病(うき)に罹(かゝ)つたり負傷(けが)をしたときは無料(ただ)で療養(りやうぢ)を受(う)けられます。

 療養(りやうぢ)を受(う)けるときは此(こ)の証(ふだ)を医師(いしや)や歯科(は)医師(いしや)に渡(わた)さなければなりません。医師(いしや)や歯科(は)医師(いしや)は療養(りやうぢ)が終(をは)る迄(まで)此(こ)の証(ふだ)を預(あづか)つてゐます。万一(もし)其(そ)の間(あひだ)に他(ほか)の疾病(びようき)や負傷(けが)の為(ため)に他(ほか)の医師(いし)や歯科(は)医師(いしや)からも療養(りやうぢ)を受けなければならぬときは此(こ)の証(ふだ)を渡(わた)してある医師(いしや)や歯科(は)医師(いしや)に其(そ)の手続(てつゝき)をお聞(き)きなさい。

三 被(ひ)保険者(ほけんしや)は療養(りやうぢ)を受(う)けることができる外(ほか)に休業(しごとをやすんでゐる)中(あひだ)傷病(しようびよう)手当金(てあてきん)が貰(もら)へます。また分娩(おさん)のときには分娩費(ぶんべんひ)や出産(しゆつさん)手当金(てあてきん)が貰(もら)へます。詳(くわ)しくは保険(ほけん)署(しよ)(組合[くみあい])や事業(やとひ)主(ぬし)にお聞(き)きなさい。

四 此(こ)の証(ふだ)が減失(なくなつたり)毀損(やぶれたり)したときは直(すぐ)に其(そ)のことを保険(ほけん)署(しよ)(組合[くみあい])に届(とど)けなければなりません。

五 被(ひ)保険者(ほけんしや)の資格(しかく)がなくなつたときは十日(とほかの)以内(うち)(引続[ひきつゝ]き給付[りようぢなど]を受[う]けてゐるときは其[そ]の給付[りようぢなど]を受[う]けなくなつてから十日[とほかの]以内[うち])に此(こ)の証(ふだ)を保険(ほけん)署(しよ)(組合[くみあい])に返(かへ)さなければなりません。此(こ)の期間内(あひだ)に返(かへ)さない者(もの)は五十円(ごじゆうえん)以下(まで)の罰金(ばつきん)か科料(くわりよう)の処分(しよぶん)を受(う)けます。

六 被(ひ)保険者(ほけんしや)の資格(しかく)がなくなつた者(もの)は此(こ)の証(ふだ)を持(も)つてゐても療養(りやうぢ)を受(う)けられません。

七 嘘(うそ)を言(い)つて療養(りやうぢ)を受(う)けた者(もの)は詐欺(さぎ)罪(ざい)として十年(じゆうねん)以下(まで)の懲役(ちやうえき)の処分(しよぶん)を受(う)けます。

八 此(こ)の証(ふだ)の「自署」と書(か)いてある欄(ところ)には自分(じぶん)の住所(すまゐ)と氏名(なまへ)とを自分(じぶん)でお書(か)きなさい。若(も)し書(か)くことができなければ他人(ひと)に書(か)いて貰(もら)つて拇印(つめいん)を押(お)しなさい。尚(なほ)此(こ)の欄(ところ)に書(か)いた住所(すまゐ)や氏名(なまへ)が変(かは)つたならば直(すぐ)に訂(かき)正(なお)しなさい。

出典:健康保険事務研究会編著『実務家必携健康保険手続早わかり』(1926〔大正15〕年9月発行)