晩秋の出羽三山神社写真はイメージです Photo:PIXTA

突如として知らないはずの言語で前世の記憶を語るという事例は、世界で多く報告されている。これによって、前世の存在が信じられている部分もあるが、そのような記憶は本物なのだろうか。臨床心理士の越智啓太氏が、前世の記憶について解説する。※本稿は、越智啓太『つくられる偽りの記憶 あなたの思い出は本物か?』(化学同人)の一部を抜粋・編集したものです。

百科事典もなく、図書館にも行かない
そんな彼女が過去の外国文化に詳しい「謎」

 年齢退行催眠の行き着く先はどこでしょう。出生の瞬間、胎児の記憶、そしてその前となると、おそらく前世の記憶ということになるでしょうか。じつは、催眠で年齢退行教示をしていくと、出生の瞬間を超えて、前世の記憶を思い出して語りはじめる人がいます。では、この記憶は本物なのでしょうか。

 この現象を真実だと認めるためには、記憶や人格が、脳を離れて存在することや、それが死亡時に遺体から離れてなんらかの形(これをアストラル体といい、この問題についての議論をアストラル体問題といいます)で移動し、胎児や乳児の体に侵入して居着くなどのメカニズムが説明され、証明されなければなりません。

 しかし現代の科学では、これらの現象はまったく考えられないものですし、実証もできません(だからといって、絶対にないといいきれないのが現代の科学的方法論の帰結ですし、歯がゆいところです)。

 ただ、実際問題として前世の記憶を語りはじめる人がいることは事実です。いったいなぜこのような現象が発生するのでしょうか。まず最初に、催眠による前世記憶の想起をめぐるいくつかの事例を紹介しましょう。

 生まれ変わりの事例の中で、世界で一番有名なのは、「ブライディ・マーフィー」の事例でしょう。

 1952年にアマチュア催眠術師のモーリー・バーンスタインが、主婦のバージニア・タイに対して退行催眠セッションを行いました。するとバージニアは、すぐに深いトランス状態に入り、年齢をどんどん遡っていき、最終的には前世の記憶を語り出したのです。