いまでは、バージニアの語った内容の多くは、バージニアが子どもの頃に近くに住んでいたアイルランド人のアンソニー・コーケル夫人がネタ元ではないかと考えられています。バージニアは、コーケル夫人にあこがれていましたし、その息子に恋していました。そしてコーケル夫人の結婚前の名前はなんとブライディ・マーフィーだったのです。

 また、リュウマチに苦しむ30代の主婦ジェーン・エバンスの事例も有名です。彼女は、催眠感受性が高く、催眠術師が退行催眠をかけるとあっという間に催眠状態に入り、前世の記憶を語りはじめました。彼女の想起の特徴は、自分の前世を何人も想起することができたという点です。

 たとえば、ユダヤ人の財産家の妻で1190年のキリスト教徒のユダヤ人迫害の犠牲になった「レベッカ」や、15世紀の裕福な財産家ジャック・クールに仕え、フランス・ブルージュの広大な屋敷に住むエジプト生まれの家政婦「アリソン」、それにローマ時代に生きていたローマ属州総督コンスタンティウス家の家庭教師の妻の「リヴォニア」などです。

「種本」があり眉唾がほとんど
語られた内容は小説とほぼ一致

 彼女の語る物語はきわめて詳細で生き生きとしており、また、当時の歴史的な状況も正しく把握していました。エバンス自身はこのような壮大な物語をつくるだけの想像力も、正確な歴史に関する知識もないように思われました。

 そのため、この事例も生まれ変わりの強力な証拠ではないかと注目を浴びたのです。彼女はしばらくの間、本やテレビのドキュメンタリーでひっきりなしに取り上げられました。

 ローマ帝国についての研究の権威であるブライアン・ハートリーは彼女の記録を見てこういいました。「一般の人が知らないようなローマ帝国についての史実を彼女は知っています。このような話をするためには莫大な量の資料や論文を読み込まなければなりません!」。

 ところが、この事例を詳細に調査していく過程で、「種本」が発見されてしまいました。1947年に出版されていたルイス・デ・ウォールという作家が書いたコンスタンティウスを主人公にした小説The Living Wood(生きている樹)がそれだったのです。