ビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

デジタル技術を活用し、ビジネスモデルや組織を変革するデジタル・トランスフォーメーション(DX)の実現は、多くの企業にとって喫緊の課題となっている。技術は進化する一方で、それらを使う私たちの“マネジメントスキル”は停滞をつづけ、DXに適した組織体制を作れずにいる。この状況を打開するのが「サーバント・リーダーシップ」を身に着けたリーダーやマネージャーだという。「サーバント・リーダーシップ」について、経営コンサルタントのロッシェル・カップ氏が解説する。※本稿は、ロッシェル・カップ氏『DX時代の部下マネジメント-「管理」からサーバント・リーダーシップへの転換』(経団連出版)の一部を抜粋・編集したものです。

「マネージャー」と「リーダー」の
違いはどこにあるのか?

 顧客である現職マネージャーから頻繁に聞くのは「上司のようなマネージャーにはなりたくない」という声です。しかし、これまでの上司は皆ワンパターンだったので、目指すべき模範となる対象がいないそうです。

 従来のマネージャー像に反発している人にとって、サーバント・リーダーシップはよい代替になります。チームのパフォーマンスは改善し、部下はより幸せに働き、自分のストレスも低下します。部下を神経質にさせる怖い上司ではなく、部下の支えとなって尊敬される上司像は目指したい姿だといえるでしょう。

 企業だけではなく、マネージャー自身にとってもサーバント・リーダーになることにはメリットが多くあります。

 本稿に記したアドバイスを実践するのはマネージャー自身です。そこで、以下ではマネージャー1人ひとりが部下との接し方をどのように改善したらよいのか、その具体的な方法を説明します。

 マネージャーの主な責任は、組織内の特定の目標を達成するためにリソースを計画、組織化、管理することです。業務が円滑かつ効率的に行われるよう、人、プロセス、システムを管理することに重点を置きます。マネージャーはタスクの処理に重点を置き、肩書きという正式な権限に依存します。

 対照的に、リーダーの役割は、共通の目標を達成するために人々を鼓舞し、やる気を起こさせることです。リーダーは、明確で説得力のあるビジョンへのコミットメントを促し、それを精力的に追求します。リーダーはまた、チームが高い業績水準を達成できるよう目標を設定し、その達成に向けて皆の努力を促します。

 リーダーはマネージャーという正式な役職についていないこともあります。なぜなら、リーダーは肩書きの権威に基づいて命令を下すのではなく、自分のアイデアの力とコミュニケーションを通じた説得力によって人々に影響を与えるからです。