リーダーシップの本質は
他者にまかせる能力

 作家で社会評論家のヴァンス・パッカードは著書『ピラミッドを登る人々』の中で、リーダーシップの定義を述べています。

「リーダーシップとは、やるべきとあなたが確信していることを、他の人がやりたくなるように仕向ける一種の技である。」

 この言葉は、リーダーシップというものをとても適切に表現しています。

 ちょっと分析してみましょう。

 リーダーシップとは、命令したり強制したりするのではなく、人に何かをしたいと思わせることです。リーダーは、自分ですべてをやろうとするのではなく、人に何かをさせる必要があります。人にやらせることは、自分自身がやらなければならないと確信していること、言い換えれば、自分自身が実際に強い関心を持っていることでなければなりません。

 日本のマネージャーは「コマンド・アンド・コントロール」(命令と管理による指揮統制)から「リーダー」へと重点を移す必要があります。また、リーダーシップは管理職でなくても、社内のどのレベルの人でも発揮できるスキルです。ですから、まだマネージャーという肩書きのない人でも、本文で紹介する考え方やテクニックを学ぶことで、そのスキルを身につけ、リーダーシップを発揮することができるでしょう。

憧れのリーダーの
行動を振り返ってみよう

 ここで、リーダーシップを考えるために脳をウォームアップするエクササイズをしてみましょう。これは、アメリカのリーダーシップの専門家であるジム・クーゼスとバリー・ポズナーが考案したものです。

 誰かの指示に進んで従ったときのことを思い出してください。職場やスポーツのチームなど、どんな状況でも構いません。そのようなリーダーとして尊敬していた人物を思い浮かべながら、次の質問に答えてください。

◆その人は、あなたや他の人が最高のパフォーマンスを発揮するために、どのような行動をとりましたか?

◆その人の行動のどこに感心し、尊敬しましたか?

◆その人のそばにいたとき、あなたはどのように感じましたか?その人の指示に基づいて行動したとき、どんな感情を抱きましたか?

 憧れのリーダーとその行動を思い出すと、心が温かくなり、真のリーダーシップとは何かがわかるはずです。