堀口先生 また、競馬やパチンコ、スロットなど、世の中に広がっている“わかりやすいギャンブル”じゃなくても、例えば今では、ゲームのアプリでガチャってあるじゃないですか。ガチャも一種のギャンブルなわけで、「レア」なキャラクターやアイテムが出たりすると、アドレナリンが出てしまうような興奮状態になってしまうことは、よくあるわけです。

マリさん ガチャ……私も課金したことがあります。ついつい、期間限定のキャラが欲しくて、思わず課金してしまったのですが、自分がまさかゲームに課金するなんて思いもしませんでした。

ガチャ課金で学ぶ
損をするときの感情

堀口先生 身近なところに、ギャンブル中毒にさせるような仕組みってたくさんあるんですよね。あと、プラスな方向、つまり儲かる感情だけでなく、マイナスな方向、損する感情もきちんと考える必要があります。一旦“損”をすると、その損を見たくない気持ちになったときってありませんか?

マリさん 実は、ガチャで課金したのも、何回ガチャを回してもそのキャラクターが出なくて。悔しくて悔しくて、それで課金したのです。しかも、課金したのに、そのキャラクターは出なかったんですよ。結局1万円ほど課金してしまいました。これも同じですかね?

堀口先生 まさに損するときの感情を学んでいますね。

マリさん これ、学びなんですかね(笑)。先生にそう言ってもらえると、あのときの感情が「よかったんだ!」と肯定的に思えます。

堀口先生 わかりやすい例で言いましょう。1万円得するのと、1万円損する、感情はどちらのほうが大きく動きますか?

マリさん 損ですね。1万円得したらラッキーくらいですが、例えばゲームのガチャで好きなキャラが出なくて1万円損したら、しばらく寝込んじゃいます。

堀口先生 いいですね。実は損をしてしまうと、その損失を見たくないという気持ちがわいてきますよね。同じ1万円でも得する場合と損する場合では、損した場合の感情の絶対値が3倍くらい大きいと言われています。

マリさん 3倍も!

堀口先生 関数で表せばこんな感じですね。「価値関数」と呼ばれています。

図表:2-7同書より 拡大画像表示

堀口先生 y軸方向が感情の大きさ、x軸方向が得をするときの金額や損するときの金額を示しています。