「損失回避」の性質のような
複雑な心の動きも関数で表現可能!

マリさん 損をするときが左側のようですね。ふくらみが大きいです。

堀口先生 おっしゃる通りです。利益の喜びよりも損失の痛みの方がずっと強いのです。しかも、この損失の痛みをなるべく回避するように考えてしまいます。例えばこんな2択ならわかりやすいです。まず、平均1万円損することがわかっているのですが……。

マリさん もうこの時点で、嫌ですね(笑)。

堀口先生 でも、助かる確率もあります。

図表:2-8同書より 拡大画像表示

堀口先生 これならどうでしょう。AもBも平均的に1万円損をしますが……。

マリさん えっと、Bですね。たしかに、大きく損をするかもしれませんが、50%助かる可能性があるじゃないですか!

堀口先生 素晴らしい。実は、それが損切りできない理由ですね。株式を運用するにあたって、もしある会社の株価が想定以上に下がってしまった場合、どうしますか?

マリさん 難しいですね。また上がるかもしれないし、もっと下がるかも……。

堀口先生 そう、現実的にはこういったときに、売れない人が多いんです。損をしたくないあまり、「プラスに転換するのではないか」という期待を抱いてしまうわけです。人は、「損失回避性」を持っているわけですね。

マリさん あ、なんか聞いたことあります。株とかでも、自分が買ったときの値段よりも大幅に下がってしまった場合、損切りできなくなるらしいですね。友人も、そのままにしてる、って言ってました。そのままにすることを「塩漬け」というらしいです。

堀口先生 損した時点で、それを見たくなくなるわけですよね。だから、その損がどんどん拡大していっても、もう損切りできなくなる。

マリさん でも、また株価が上がる可能性だってありますよね?

堀口先生 その通りです。しかし、もう上がることはないかもしれません。その場合、どうなりますか?

マリさん えっと、資産がなくなってしまいますね。

堀口先生 そうですよね。それは資産を運用する上で最も避けたいはずです。また上がるかもしれない。これは期待であって確実なものではありません。でも、そこに希望を抱きたい。これが損失回避の考え方になります。

マリさん 今までぼんやりと感じていたことが明確になりました……!

堀口先生 自分の想定の範囲外になったとき、冷静に損を確定させることができるか。これはわかっていてもなかなかできないことなんですよね。

マリさん こんな心の動きまで「関数」で表現できるなんて。

堀口先生 そうなんです。人の感情は思っているよりも、関数で表現できるんですよ。1万円が2万円になっても額面通りに受け取ることができないのが人の心です。先ほど学んだビールの法則から言えば約1.6倍しか嬉しくないわけです。

マリさん 衝撃的なお話でした。