老舗らしい格調を保ちつつも、現代に通じるような普遍的なイメージ、そして親しみやすい雰囲気をリクエスト。お客様視点で見て、文字や画像に違和感がないことも重要なポイントです。せっかくサイトを訪れてくれても、ほんの少しの違和感やモヤモヤが離脱に繋がります。スマホで見られることが多いため、スマホ画面での表示も念入りにチェックしました。

 なお、この公式サイトのリニューアル資金として、小規模事業者持続化補助金を使いました。やはり、「使えるものはすべて利用すべき」です。

 これで、商品を購入してもらうための入り口が完成しました。

事前準備2 購入を後押しする導線設計

 ホームページをリニューアルしてECサイトのデザインが確立したら、次は購入導線の設計です。サイトを訪れたお客様に対して「これを買おう!」という、価格的にちょうどいい“入口商品”を置いておくことが有効だと考えました。

 その頃の「鯱もなか」は、まだほとんどの方が知らない存在でしたが、看板商品なので何を置いても「鯱もなか」を買ってほしい。

 とはいえ、つぶあんが苦手、あんこが苦手という方がいらっしゃることも事実です。じつは、「鯱もなかのあんこなら食べられる」という声をたくさんいただいています。それにはまず、一度食べていただかないと始まりません。

 そこで、「鯱もなか」と焼き菓子など洋テイストの商品を詰め合わせたお試しセットを作ることにしました。その名も「鯱セット」。鯱もなか2個・鯱フレンド(フィナンシェ)2個・鯱サブレー3個・金鯱フルーツケーキ1個を詰め合わせました。

 名前を見ておわかりだと思いますが、すべて「鯱」にちなんだお菓子です。元祖鯱もなか本店は、社名・屋号・商品名のほとんどに「鯱」を冠しているので、いわば店を象徴するようなセット。お求めやすいようなお試し価格(当時1200円)に設定、さらには送料無料にして、ECサイトのトップに大きく載せました。

 簡易的な梱包なので贈答用には適していませんが、ホームページを訪れた人がそのまま離脱せず、「まずはどんなものか食べてみたい」と購入画面に進んでもらえるように設計した商品です。一つひとつのお菓子は元からあったものですが、組み合わせを工夫したことで、とても魅力的な入口商品となりました。

 この狙いが見事的中し、「鯱もなか」が大きく話題になった際に「鯱セット」が爆発的な売れ行きを見せるのは、もう少しだけ後の話です。