コカ・コーラを日本一売った男が説く「顧客を幸せにする営業」の極意、成約したのに心が痛んだ案件とは?Photo:Justin Sullivan/gettyimages

四国コカ・コーラ ボトリング社で営業職として活躍し、日本コカ・コーラ社主催の全国セールスフォースコンテストで第1位を獲得した山岡彰彦氏の著書『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』から一部抜粋して、同氏の営業ノウハウをお届けします。今回のテーマは「顧客を幸せにする営業」について。

商品を「売る」のではなく
買っていただく

 何事にも当てはまりますが、社会にいると当たり前なことがそうでなくなってきて、ごく常識的なことでもちょっとした違いに気づかなくなってしまうことがあります。営業の基本的な考えについても同じことが言えるように思います。

 営業所での会話で私たちはよく「売ってくる」という言葉を使っていました。朝礼でも上司から「いいか、気合いを入れて売ってこいよ!」とハッパを掛けられますが、よく考えると製品を購入する、仕入れてくれるのは取引先である相手です。

 正確には「売る」というより「買っていただく」ということです。強引に売ることはできるのかもしれませんが、それをやると単なる押し売りになってしまい、お客様との人間関係を損なってしまいます。

 このことは他の仕事や人間関係にも当てはまります。自分の望むことをゴリ押しすると、結局は長くは続かず、上手くいかなくなるということです。そして、それは必ず自分のところに返ってきます。

 しかし、皆が当たり前のように言葉を交わします。「今日はどのくらい売ってきたんだ」
「おう、パーディ(一日当たりの売り上げ目標)分は売ってきたぞ」といった具合です。ここにちょっとした落とし穴があるのです。

 私たちの営業の仕事はそれぞれ担当領域に区切られたルート営業です。そこの全体売り上げを伸ばすことが使命となっています。それにはこのエリアで製品を買っていただくための機材をいかに増やしていくのかが鍵となります。営業職に携わっていれば当然のことですが、この増設が結構なプレッシャーになります。