知恩院京都の除夜の鐘の代名詞「知恩院」(東山区)

2024年もあと数日で終わろうとしています。この年末年始は京都で暮らすように過ごしてみてはいかがでしょうか。キーワードは、除夜の鐘、年越しそば、初詣、白みそ雑煮、迎春和菓子の五つです。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)

圧巻!「知恩院」の除夜の鐘

 京都市内には、およそ1700ものお寺があるといわれます。市の面積は山林部も入れて約828平方キロメートルですから、平均すると1平方キロメートル当たり約2カ寺が存在するわけです。大晦日(おおみそか)の夜、京の町に響き渡る「除夜の鐘」から、年末年始の過ごし方のご案内を始めましょう。

 京都で除夜の鐘を聞いてみたい方には、京都の人なら誰もがその名を挙げる浄土宗総本山知恩院をまずおすすめします。2024年は法然上人が浄土宗を開いてから850年に当たる記念の年でした。宗派の枠を越え、この一年を締めくくるためにもふさわしいのではないでしょうか。

 除夜とは「除日の夜」の略。「除日」が大晦日を表します。つまり、「除夜の鐘」は大晦日の夜の鐘の意味となります。では、なぜ除夜の鐘は108回鳴るのでしょうか。「108」は人間が持っている煩悩の数です。鐘の音は清めの意味を持ち、鐘を1回撞くことで、煩悩を一つ消し去る。それを108回繰り返すことですべての煩悩を消し去り、清らかになった心で新しい一年を迎えましょう、ということなのです。

「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」――『平家物語』冒頭のおなじみのフレーズに出てくる「鐘」とは、インドや中国を経て日本に伝来した「梵鐘(ぼんしょう)」のこと。「梵」は宇宙の根本原理を表すサンスクリット語で、清らかさや神聖さを意味するそうです。

 知恩院の梵鐘は1636(寛永13)年、第32世の雄誉霊巌(おうよれいがん)上人の呼びかけで鋳造されたものです。東大寺(奈良市)、方広寺(東山区)と並んで日本三大梵鐘に数えられます。東大寺の梵鐘が高さ3.86m、口径2.71m、重さ26.3トン、方広寺の梵鐘が高さ4.2m、口径2.8m、重さ82.7トン、知恩院が高さ約3.3m、口径2.8m、重さ約70トンですから、日本最大級といって相違ありません。戦時中、金属供出を求められましたが、あまりに大きくて重すぎるので持ち出せなかったことが幸いし、今に受け継がれています。

 100年ほど前の1922(大正11)年には、撞かれたこの梵鐘の下に潜り込んだ有名人がいます。「相対性理論」で名高い物理学者アルベルト・アインシュタイン博士です。鐘の真下は多方向から反響する音が打ち消し合って無音状態になるという仮説を、身をもって確かめたというわけです。