適切なタイミングで、効果的に施策を打ち出すための心構えとは

――小林さんのお話全体を通じて、企業は、世の中のトレンドをつかみながら、適切なタイミングで効果的に施策を講じていくことが大切だと思いましたが、そのために、人事担当者はどのような心構えでいたらよいのでしょうか?

 人事の仕事で一担当者に留まる人と、その上に行く人との違いは、“経営者が、いま、何を考えているのか”を見極められるかどうかです。人事系の会合に行くと、「トップのコミットメントが足りない」というような声が聞こえてくることがありますが、それは人事部側が、トップを動かすような提案ができていないということ。では、どうしたら経営者の考えがわかるかというと、そのヒントはまさに世論やトレンドにあります。

パーソル総合研究所『HITO』vol.23「人事トレンドワード2024-2025」
2024年で3回目となる「人事トレンドワード」企画。ちなみに2022年の1回目は「テレワーク」「DX人材」「人的資本経営」、2023年の2回目は「賃上げ」「リスキリング」「人材獲得競争の再激化」であった。
パーソル総合研究所『HITO』vol.23「人事トレンドワード2024-2025」
2024年で3回目となる「人事トレンドワード」企画。ちなみに2022年の1回目は「テレワーク」「DX人材」「人的資本経営」、2023年の2回目は「賃上げ」「リスキリング」「人材獲得競争の再激化」であった。
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 社長がどこかで、「いま、○○がトレンドだ」という話を聞いてきて、「うちでもできるんじゃないか?」などと言ってきたときに、「うちの会社はこういう事情なので、もっとこうしたほうがよいと思います」などと切り返せるかどうか。社長よりも現場を知っているのが人事部なので、さまざまな話題に対し、きちんと調べている、知っているということを見せられれば、一目置かれて、もっと深い議論ができるようになるはずです。

 冒頭でも触れたように、私はいつも、「人事トレンドワードのような情報は、企画書の1枚目に載せるものだと思ってください」と言っています。「世の中の動きがこのようです。自社ではこういうことをしませんか?」と提案することこそ、人事部の仕事。経営者や外部の投資家などから降ってきた人的資本経営やリスキリング、働き方改革といった話に振り回されるのではなく、もっと、人事サイドから流れを作る展開があってよいと思います。次のトレンドを自ら創るような気概を持って取り組むことで、人事の皆さんにとっても、仕事が充実したものになるのではないでしょうか。