イシイさんと付き合っていた女性を私は直接知らないが、彼の話を聞く分には、もちろん生まれつきのサイコビッチであるわけではない。ヤマダさんの方に至っては、彼が「やばい女」と呼んだ彼女はもともと私の親友のバイト友達だったのでよく知っているが、別にツノが生えているわけでも、妄想癖があるわけでも、異常行動が目立つわけでもない、常識的な子だった。

 彼らの自分勝手な言い分を聞いているとよくわかるが、彼らに人を傷つけたり人の人生を振り回す悪気は全然ない。

 ただし、特徴として顕著なのは、自分の目の前に見えている現実以上のことは何一つ想像しない、自分という人間と自分に関わっている女性が同じように人間であり同じように人生を生きているという発想がからきしないということがある。

愛人をモンスターにする
「圧倒的な想像力の欠如」

 男に人生や生活や目的や楽しみや気分があるように、女にも人生や生活や目的や楽しみがある。当たり前すぎて誰も口にしないが、それはそうだ。浮気相手に恨まれるタイプの男というのは、目の前で楽しんでいるように見える女が、「自分の目の前でセックスを楽しんでいる女」以上の存在だとは一切思っていない。

 しかしもちろん彼に見えている姿の後ろに、彼女たちの人生や生活があるわけで、そのことに対する圧倒的な想像力の欠如は、次第に態度や行動ににじみ出て、人間として尊重されていないことに気付いた彼女たちは、たとえ自分が当初その関係を楽しんでいたのだとしても、何かのきっかけで恨みを持つようになる。

 そして当然、人間扱いされないのだから、人間らしい振る舞いをする義理もなく、平気でモンスターになる。

 彼らのもう1つの、最大の特徴は、何一つ犠牲にする気がないことだ。彼らが支払うのはせいぜい1~2万のタクシー代やホテルの料金くらいで、自分の楽しみのために自分の何かを犠牲にする気は全くない。

 犠牲というのは何も、高額なお金を払うとかいうことだけではなく、何か妻の不安や愛人の不満を埋めるための努力をしたり、自分の時間を作って人を喜ばせたり、悪いことをしている分、その100倍よいことをしたり、そういうことを全部含むが、他人に損をさせているという罪悪感がない彼らは、自分が実は不当に得をしている自覚もないため、そういった努力など全くしない。

 なぜかウィンウィンの関係だと思ったり、イーブンな関係だと思ったりするらしいのだが、彼以外誰も得はしていないのだ。