医療機器 21兆円への挑戦#5Photo:Israel Sebastian/gettyimages

国内ではテルモ、オムロン、タニタなどが体温計の大手だが、体温計はコモディティー化しており収益性は低く、事業単独で成り立たせるのは難しい。ではこれらの企業は何を収益源としているのか。特集『医療機器 21兆円への挑戦』の#5では、体温計の老舗メーカー3社の医療機器での“勝ち筋”を解明する。実は、3社は同業とはいえないほどに注力領域が異なっており、優勝劣敗が鮮明になっている。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

コモディティー化した体温計
生き残りには他事業の強化が必須

 家庭用の体温計といえば、テルモやオムロン、タニタといったメーカーを思い浮かべる人が多いだろう。コロナ禍で非接触型の体温計が普及したこともあり、各社が豊富なラインアップをそろえている。

 だが、体温計は今やコモディティー化しており、商品の差別化が難しい。各家庭に置かれる体温計は企業ブランドの認知度向上につながるとしても、収益性は高くない。体温計を長年手掛けてきた各社にとって、「体温計はやめるにやめられない」というのが本音だろう。

 では、体温計の大手メーカーは医療機器でどのような成長戦略を描いているのだろうか。詳細は後述するが、とても同業とはいえないほどに注力領域が異なっており、優勝劣敗が鮮明になっている。

 医療機器専業のテルモは、今やカテーテル(血管など体内に挿入して治療や検査を行うための細い管)の分野で世界的な大手メーカーに成長を遂げている。得意分野では欧米の強豪と渡り合っているのだ。

 一方、ファクトリーオートメーション(FA)が大黒柱のオムロンは、同事業の不振から、昨年には2000人ものリストラを発表している。本業の低迷が医療機器事業に悪影響を及ぼすことはないのだろうか。

 次ページでは、体温計の老舗メーカー各社の医療機器での“勝ち筋”を解明する。