高配当・半導体・生成AI超進化!5年後の業界地図#17Photo:PIXTA

日本を代表するグロース株として市場評価が高かったエムスリーに異変が起きている。2期連続で減益に転落し、株価が高値から85%も下落しているのだ。一方、エムスリーを追うJMDCは医療データの利活用を武器に躍進が続くが、株価はエムスリーに「連れ安」している。果たして「2強」の今後はどうなるのか。成長セクターだけに、大手生命保険やベンチャーも参戦して、合従連衡も加速している。特集『高配当・半導体・生成AI超進化!5年後の業界地図』(全19回)の#17では、最新情勢を解説しながら、新たなビジネス機会が立ち上がりつつある医療IT業界の5年後の勢力図を予測した。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

2期連続減益で株価は85%下落
エムスリーの成長は終焉したのか?

「医療IT業界の王者」の株価に異変が起きている。日経平均株価が史上最高値を更新する中、エムスリーの株価下落が止まらないのだ。

 株価急落の要因は業績の急ブレーキである。2004年に上場して以来、売上高も利益も急拡大を続けてきたが、22年3月期を頂点に利益成長がストップ。2期連続で減益に転落し、株価は21年1月の高値から85%以上下落した。

 業績の鈍化が見られ始めた当初は、「コロナバブルの剥落」「需要に対して人手不足」等、一時的な理由による踊り場と説明されることもあった。だが、UBS証券の葭原友子アナリストは「医薬品市場のトレンド変化により、販促活動が変質している」と指摘する。一過性の踊り場といえる状況ではなくなっているのだ。

 一方、エムスリーを追う立場のJMDCは、医療データ利活用がけん引して24年3月期も18%営業増益で着地した。今期は33%増収、33%営業増益とさらに成長が加速する会社計画となっている。

 SMBC日興証券の徳本進之介シニアアナリストは「医療IT業界は四つのステークホルダー(関係者)に対するビジネスになっている」と説明する。四つのステークホルダーとは「製薬会社」「医師」「健康保険組合や企業」「患者」である。

「エムスリーが強い、製薬会社向けのビジネスの成長が鈍化している一方、四つの領域をつなぐ『医療データ利活用』が伸びてきている。また、健康保険組合や企業において治療から予防への動きが起きており、この領域でもM&Aや合従連衡が加速している」(徳本氏)

 先進国を中心に少子高齢化が進む中、医療費抑制は世界共通の課題だ。そのために不可欠なのはDX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化であり、医療IT業界への期待は高い。将来的には「1兆円市場」に成長する可能性もあるが、合従連衡が加速する中、業界の序列は変わるのか。

 次ページではエムスリー、JMDCの「2強」に加え、ケアネット、メドピア、メディカル・データ・ビジョンなどが入り乱れる医療IT業界の5年後の勢力図を分析。成長業種だけに、足元では生命保険や商社などの大手プレーヤーやベンチャー企業の参入も目立つ。5年後に勝つ会社、失速しかねない会社とは?

図表:医療IT業界の5年後 サンプル