国内の医療機器専業メーカー最大手のテルモが躍進を続けている。カテーテル治療に使われるガイドワイヤーでは世界トップシェアだ。好調なのは業績だけではなく、株式市場から高い評価を受けているのだ。時価総額は4.4兆円と、住友商事など大手総合商社にも引けを取らない。特集『医療機器 21兆円への挑戦』の#9では、テルモの鮫島光社長を直撃し、投資家から高評価を得る秘訣やM&A戦略を語ってもらった。包括的業務提携を解消したオリンパスとの関係はどうなるのだろうか。(聞き手/ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
売上高が20年間で5倍の1兆円に
トラブルなく安定成長が続き投資家から高評価
――昨年4月に社長に就任して、もうすぐ1年になります。
2024年4~9月期は上期として最高業績ですし、業績には手応えを感じています。この先は、事業ポートフォリオをどうやったらより高度化できるのか、26年度までの中期経営計画「GS26」の先を見据えていかなければなりません。
――時価総額が高く、国内大手商社にも引けを取らない規模(1月16日現在で4.4兆円)になっています。株式市場から評価されている理由はどこにあると思いますか。
20年前は売り上げが2000億円程度でしたが、今では1兆円近くにまで成長しています。クロスボーダーM&Aを上手に進めてきましたし、大規模な品質トラブルやスキャンダルを起こしていません。ネガティブサプライズがなく安心感があって、成長に期待ができる。これが投資家に評価されている要因だと思います。
――今後のM&A候補となる分野や地域を教えてください。
特に重視しているのが米国です。米国は医療機器の圧倒的最大市場で、戦略的に最重要地域です。既存事業を強化するM&Aが主なターゲットになります。
米国では大統領が交代しますが(ダイヤモンド編集部注:インタビューは大統領就任式前の25年1月14日)、医療や保険が今回の選挙の争点にならなかったこともあり、事業環境に大きな変化はないとみています。
欧州でもチャンスがあると考えています。製薬メーカー向けのCDMO(開発製造受託)を強化する上で、潜在顧客の多い欧州はM&Aのターゲットになり得ます。
一方、日本は是々非々です。日本の医療ニーズをつぶさに見て、1社で進めるのが難しいときには、他社と組むことは全くオープンです。
――オリンパスとは、包括的業務提携が終了し、合弁も解消しました。
次ページでは、長年手を携えてきたオリンパスとの関係性について激白する。鮫島社長がテルモの社長人事に言及している点も注目だ。実はテルモは、鮫島社長を含め、社長が3代続けて旧東亜燃料工業(現ENEOS)出身だ。これからも“東燃政権”は続くのだろうか。