売上への執念とハードワークで人材不足を乗り越える

 レントラックスは社員たった38人で上場した会社です。そのような規模で上場を目指していましたから、常に人手不足でした。金子は経営と営業を、私は営業と人事を兼務していました。なぜ金子も私も、経営と人事に専念せず、営業現場に出ていたのか。それは、会社にとって売上とは、何より重要なものだからです。また、メンバーに背中を見せるという意味もありました。

 上場を実現するには、3年3期連続で増収増益し、しかるべき人員と組織をつくりあげ、業務フローを整えて、書類を揃えなければなりません。ですが私たちは、最初はたった10人。やがて38人に増えましたが、それでも本当に限られた人数です。上場を目指して利益を出さなければならないタイミングでしたから、人材への投資は最小限に絞っていたのです。腹をくくって「やるしかない」という状態でした。

 当時は本当にハードワークでした。自宅が遠かったシステム本部長は、1週間のうち半分ほど、会社近くのホテルに泊まっていたのを覚えています。本当に最低限の人員で「大丈夫ですか?」とお互いに心配し合い、助け合いながら、怒涛の日々を乗り越えていきました。一人あたり、一般的な会社の1・5倍から2倍程度の仕事をこなしていたと思います。

 ただそれでも、「どんどん売上が積み上がっている」という実感と、それに伴う楽しさがあったことをはっきり覚えています。不思議なことに、業績が上がっているとき、人は一種のトランス状態になるようです。やればやるほど成果が出ますから、疲れているはずなのに「もっと仕事をしたい」とさえ思っていました。

上場に必要なのは「数字」や「人員」ではない

上場に向けて動く中で、証券会社からはたびたび厳しい指摘が入りました。業績は着実に伸びており、私たちからすると「準備は整った」という認識でしたが、証券会社からすると「まだまだ」だったようです。

 たとえば月次の業績。計画を上回る達成でしたが、主幹事証券によると、体制以外にも整えなければならないところがたくさんあるという感じで、なかなかGOをいただけません。予実管理においても同様です。予算未達成は絶対にダメ。かといって、大幅な超過達成もいけない――。これは私たちにとって大きな難題でした。