実際に異常があった場所と脳が痛みを感じる場所が離れていると、痛みを訴える本人も、ぼんやりとしか痛みの位置がわからないようです。

 代表的な関連痛としては、狭心症や心筋梗塞など心臓に異常があるときに、背中に痛みを感じるというものがあります。

かき氷を食べたらこめかみが
キーンと痛むワケ

 もっと身近な例としては、「かき氷を食べたらこめかみがキーンと痛む」というのも関連痛の一種です。これは「アイスクリーム頭痛」と呼ばれ、急に冷たいものが喉を通ることで、顔全体の痛覚の神経である「三叉神経」が刺激され、脳が「冷たさ」と「痛み」とを勘違いし、頭痛が起きたように感じます(ただし、アイスクリーム頭痛の場合は、急激に低下した口腔内の温度を上げるために血管が一時的に膨張して血流が増大し、痛みが起こるという説も有力です)。

 原因が股関節にあるのに、別の場所が痛むというケースもよくあります。

 殿部や腰が痛い、坐骨神経痛になってしまったと思ったら、変形性股関節症だったということがわかったり。「太ももに痛みを感じる」というので大腿骨の疲労骨折かと思いきや、股関節周りの筋肉や骨盤の仙腸関節に原因があったり。

 通常、股関節に問題があると鼠径部に痛みを感じるのですが、体というのは思わぬところからSOS信号を発するのです。

 また、関連痛の難しいところは、実際に障害が起きている部位と脳が痛みを感じている部位とが、ほぼ関係がないことです。それだけに、痛む場所から原因を特定するのは容易ではありません。

 整形外科のドクターは、「痛みを感じている組織に何が起きているのか?」を診察し、治療することができます。つまり、筋肉や靱帯に起きた断裂や骨折、あるいは炎症や腫れなどは問題なく対処できるのですが、関連痛は痛みのある場所をレントゲンやエコーで見ても何も見つからないので、うまく診断ができないことも多いのです。

 スポーツの現場では、関連痛については我々フィジカルトレーナーが対処する役回りとなります。ただし、過去に同じような例を見たことがあるなど、ある程度の経験がないとなかなか特定には至らないので、手ごわい痛みだといえます。