その後、静かな礼拝の時間に心地よさを感じ、日曜日ごとに通うようになったそうです。

 神社仏閣や教会などの祈りの場所を訪ねたり、お遍路の道を歩くなど信仰の対象となってきた土地を訪れてみたりするのもいいかもしれません。

 母親を胆管がんで亡くした30代の女性は、こう話していました。

「お寺や神社を訪ね歩いて、御朱印をいただく時間は、母と一緒にいるようで、心が少しおだやかになれるんです。

 家には仏壇がありませんが、月命日のたびに神社仏閣に出かけては、手をあわせて母の安寧を祈っています」

 月命日の日付が並ぶ御朱印帳は、もう4冊目になっていました。

困ったことがあったときは
心の中で父に相談をする

 人間の力を超えたものを意識することで、自分が守られているように感じられることがあります。

「亡くなった父がいつも見守ってくれている感じがします」と話してくれたのは50代の女性です。

「困ったことがあったときに心の中で父に相談をすると、私のまわりに蝶が飛んでくるんです。『あっ、父だ!』と、いつも心がなごみます。

 父が一緒に考えてくれているような気がするんですよ。すると、困っていることも望ましい方向に解決できたりするんです。

 亡くなっても、いなくなるわけではないんですよね……」

 このように思いを話してくれました。

 祈る心と感謝の気持ちをもつことは、あなたの心を豊かにしてくれるように思います。

 ところで、先ほどの息子を亡くした70代の女性宅には、四十九日を過ぎた頃から、ある宗教系団体の信者とおぼしき人が何度かやってきたといいます。

書影『もう会えない人を思う夜に 大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『もう会えない人を思う夜に 大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
坂口幸弘・赤田ちづる 著

『私たちのところに来ると、息子さんと話をすることができるようになりますよ。いらっしゃいませんか』

 こうした言葉でくり返し勧誘してきたそうです。

 たまたま女性を心配して様子を見にきていた近所の人が、もう来ないようにと話をしてくれたために何事もなく今に至ります。

 残念ながら、このように弱みにつけ込んでくるような怪しげな人もいないわけではありません。

 困ったことがあれば、自分ひとりで抱えこまずに、だれかに相談することも大切なように思います。

POINT 人間の力を超えた大いなるものに身をゆだねることも大切