韓国人観光客たちが訪れるのは、上海ディズニーランドや外灘(バンド)、東方明珠(テレビ塔)といった定番観光地に加え、大韓民国臨時政府の旧跡(韓国人にとって、独立運動の聖地とされている)や、旧フランス租界にある歴史的建造物「武康大楼」がそびえたつ武康路なども人気だという。

1月中旬、突然「路上スーパーカーショー」が始まった

 しかし2024年1月中旬、この平和な観光風景に異変が起きた。人気スポットである武康路周辺に、突然、たくさんの高級車が集結し始めたのだ。ランボルギーニ、フェラーリ、ロールスロイス、ポルシェなど、世界的に有名なスーパーカーや限定モデルが次々と集まり、まるでモーターショーのような光景が展開されるようになった。

 カラフルで派手な高級車が集結する事態は、SNS上でも「200万元(約4000万円)以下の車は恥ずかしくなる」と話題になるほどで、瞬く間に大勢の見物人が集まるようになったのだ。

 しかしそもそも、なぜ上海でこんな事態が起きるようになったのだろうか?

「上海には高級車がない」?~愛国心か、見せびらかしか

 この「ショー」の目的は、「韓国人を驚かせる」「韓国人観光客に中国の経済力を見せつける」ために始まったと言われている。というのは、かつて上海を訪れたある韓国人が、「上海には高級車がない」と帰国して発言した、という噂が流れたからだ(後に、この噂は根拠のないものだと韓国メディアが検証している)。

 これに対し、「上海には高級車があるぞ」「上海の経済力はすごいぞ」と見せつけるべく、たくさんのスーパーカーで中国人が武康路に集まるようになった、というのである。

「高級車で我が国の侮れない経済力を見せつける」という新しい“文化”は、瞬く間に中国のSNSを賑わせた。「よくやったぞ!我が国の力を見せつけてくれている!」「これこそ真の愛国行為だ!我が国の経済力を世界に示そう!」と、興奮気味にコメントを投稿する人々が後を絶たなかった。