「選手のプレーや態度に不満を覚えた際などに激昂し、選手の至近距離で大きな声で叱責する、選手の胸ぐらをつかんで突き飛ばす、押し倒すといった言動を繰り返しており、時には選手を殴る、頭をはたく、蹴る、平手打ちをするといった行為に出ることもあった」

 こうした暴行はトップチームだけでなく、高校生年代のサガン鳥栖U-18監督を務めた2016年から18年にかけて、より頻繁に繰り返されていたと報告された。さらに「死ね」「殺すぞ」「俺の前から消えろ」「貴様、サッカー辞めろ」などといった暴言の対象には、言うまでもなく高校生も含まれていた。

公認ライセンスを降級
1年間の指導資格停止も

 事態を重く受け止めたJFAは22年3月、金氏が保持していた公認ライセンスを、Jクラブの監督を務める上で必要な最上位のS級からひとつ下のA級ジェネラルへ降級させた。前例のない厳罰を科すとともに指導者の資格自体も1年間停止させ、各種研修や社会奉仕活動への参加を義務づけた。

 処分が明けた金氏は2023シーズンから町田のヘッドコーチに就任。高校サッカー出身の黒田剛監督を主に戦術・戦略面で支えながらチームのJ1への初昇格、そして昨シーズンのJ1リーグ3位躍進に貢献した。その間には約1年をかけてS級ライセンスを再取得し、監督を務める上での資格を回復させた。

 そして、手腕の高さを見込まれて福岡からオファーが届いた。シーズン中とあって沈黙を貫いていた福岡は全日程終了後の昨年12月13日に、賛否両論があるなかで金新監督の就任を発表。同16日には福岡市内のクラブハウスで就任会見を開き、川森敬史代表取締役会長がこの件に初めて言及した。

「私どもの基本理念は決して変わりません。いままでも、そして当然これからもそれを軸にクラブを経営していきます。そのなかで金監督自身が過去をしっかりと反省し、努力を重ねてきております。過去の間違いを乗り越える過程もまた、子どもたちにとって大切な学びや刺激になると信じております」