質疑応答では、自身が及んだ数々の行為を「真摯に受け止めて、これからの言動で少しずつ信頼を取り戻していきたい」と反省した金監督へ、パワハラ被害者への謝罪の有無を問う質問も飛んだ。
「パワハラ被害について(調査チームに)本人が話したのか、第三者が話したのかは僕自身にもわかりません。匿名性があるので、個人に対しては謝罪ができていません」
このように答えた金氏へ「当事者ならばわかるのではないか」と、さらに質問が重ねられた直後だった。川森会長が「すみません。今日は釈明会見ではないので」と遮り、さらにこう続けた。
「当時過ちを犯したときに、クラブを通じて謝罪をしているとご理解していただけますか」
長年チームを支えてきた
辛子明太子の「ふくや」がスポンサー撤退
このやり取りが、さらに深刻な事態を招いた。福岡の主要スポンサーで、辛子明太子の製造・販売で有名な株式会社ふくや(本社・福岡市博多区)が12月30日に公式Xを更新し、契約を新たに更新しないと発表した。諸般の事情としていた理由は、一夜明けた大晦日になってその詳細が明らかになった。
福岡の社外取締役も務めるふくやの川原武浩社長が自身のnoteを更新。福岡でパワハラなどの事案が再発もしくは再燃した場合のレピュテーションリスク発生の可能性を排除できず、さらに金監督選定のプロセスが先述した福岡の基本理念に相違していると指摘。そのうえでこんな思いを綴った。
「川森会長によると『当時、過ちを犯してしまったクラブを通じて謝罪を行いました』とのことですが、謝罪をすることと、それを被害者側が『受け入れ許した』かは別問題です。(中略)過去のことは全て解決済みであるというアビスパ側の見解に対して、確信を持つに至りませんでした」
2007年から福岡のスポンサーに名を連ねてきたふくやは、福岡が深刻な経営危機に陥った13年10月に「アビスパ福岡支援商品」を販売。売上金の全額を福岡に寄付し、そこへ個人や法人からの小口協賛金が集まった結果として、資金繰りがショートする寸前で危機を回避した歴史がある。
監督人事は福岡の取締役会における議決案件だったが、川原社長はnoteで「社外取締役の立場で明確に『反対』意見を表明しました」とも明かした。ユニフォームの左袖にもロゴを掲出するなど、絆の強さを感じさせたふくやのスポンサー撤退が与えた衝撃は、当然ながら小さくはなかった。