レッドブルがJ3大宮アルディージャ買収のなぜ、黒船との「前代未聞タッグ」が日本サッカーに迫る変革とはJ3の大宮アルディージャをなぜレッドブルが……?その先に見据えるものとは Photo:YUTAKA/アフロスポーツ

サッカーJリーグのクラブ経営が、新たなフェーズを迎えた。J3リーグを戦っている大宮アルディージャの運営会社が発行する全株式を、オーストリアに本社を置くエナジードリンクの最大手レッドブル社が取得。32年目を迎えているJリーグの歴史で外資系企業が初めて単独オーナーにつき、10月1日から新体制をスタートさせた。なぜ日本サッカー界に黒船がやってきたのか。なぜ白羽の矢を立てたのがJ3の大宮だったのか。日本のプロスポーツ界をも驚かせた株式譲渡の全容を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

日本サッカー界に黒船到来
大宮への外資参入はなぜ異例なのか?

 サッカー界だけにとどまらず、野球やバスケットボールを含めた日本の主要プロスポーツの歴史を振り返ってみても、前例のない経営形態が10月1日付けで誕生した。

 プロサッカークラブの単独オーナーに、巨額な資金力を誇る外資企業がつく。いわゆる「黒船」が到来したのは、埼玉県さいたま市をホームタウンとする大宮アルディージャ。今シーズンはJ3リーグを戦っている大宮を買収したのは、オーストリアに本社を置くエナジードリンク最大手のレッドブル社だ。

 大宮および女子プロサッカーのWEリーグを戦う大宮アルディージャVENTUSは、さいたま市に本社を置くエヌ・ティ・ティ・スポーツコミュニティ株式会社が運営してきた。同社が発行する全株式を所有してきたNTT東日本とレッドブル社との間で、経営権が譲渡される契約が結ばれたのは8月だった。

 その後は9月末までにすべての手続が完了し、10月1日から運営会社名が「RB大宮株式会社」に変わった。「アールビー」と読む「RB」とは、言うまでもなく「Red Bull」の頭文字を取ったものだ。佐野秀彦代表取締役社長が留任する一方で、レッドブル社からはいずれも非常勤の代表取締役と監査役が就任した。

 今回の株式譲渡契約が 、なぜ「前例のないもの」と位置づけられているのか。実はJリーグは参加クラブの資格要件として、外資企業による株式の保有を制限してきた歴史がある。

 創設時に最大の理念として掲げられた地域密着と、利益を最優先するオーナーの意向が反映されると考えられていた外資企業の経営方針とが合致しないと、当時は判断された。しかし、中東やロシアなどの資本が次々と参入し、ヨーロッパのサッカーシーンがいい意味で激変した状況が転機になった。

 こうした状況下で、外資系企業が日本法人を設立して運営に当たれば規約違反にはならないと、Jリーグは規約を拡大解釈。これを受けて、横浜F・マリノスが2014年5月に、英プレミアリーグの強豪マンチェスター・シティの持ち株会社、シティ・フットボール・グループに株式の約20%を譲渡している。