メールで昭恵さんにその旨を報告しましたが、謝罪も驚いた様子もなく、「あら、どうなっているのかしら?」という返事が返ってきました。「ああ、この人は自分が持つ権力に気づいていないし、近寄って来る人たちへの警戒心があまりに薄い人だな」と、そのとき不安な思いを抱きました。
安倍政権の躓きに深く関与
本当に「私人」だったのか?
案の定、事件は起きました。第二次安倍政権の最初の大きな躓きは、森友学園問題でした。昭恵さんは、なぜかこの学園が運営する不思議な幼稚園に関係していました。皇族が関西に来ると、その車列が通る道で日の丸の旗を打ち振るのが、この学園の園児たち。警備にあたる警察関係者の間では、有名な幼稚園だったそうです。
そして森友学園は、国に国有地の取得を申請しました。幼稚園ではなく、安倍晋三記念小学校という名前が予定され、首相の妻が名誉校長という計画です。実際、法外な値段での売却許可が出ました。小学校用地として2016年6月に購入した大阪府の国有地は、更地価格9億5600万円に対し、地下埋蔵物撤去費用の約8億円が差し引かれて、1億3400万円で売却されたのです。
朝日新聞がこれを記事にして「首相夫妻による影響があったのではないか」と騒動になりました。安倍晋三首相の親友が関与する加計学園問題と併せて森友・加計問題(モリカケ問題)と騒がれたことは、記憶に新しいと思います。
当時、これは瀆職ではないかという論争が国会で繰り広げられました。正直、安倍首相の答弁は目茶苦茶なものでした。「妻は『私人』であり、私が知らないところで土地売買の申請をしたので、政治的圧力はない。もし、私が権力を利して瀆職をしたのなら、職を辞す」とまで言い切り、妻を弁護しました。
しかし第一に、首相夫人が名誉校長になる予定で、首相の名前まで冠する学校を建設したのだから、国有地を払い下げする計画を首相自身が知らないことなどありえるでしょうか。さらに、首相夫人は私人なのでしょうか。実際、昭恵夫人には5人もの公務員の付き人がいました。公務員が国の給料で世話をする私人など、聞いたことがありません。
しかし、当時の国会は自公が圧倒的多数を占めており、誰も納得できない首相の答弁で国会が大騒動になっても、国会運営で野党の意見は通りません。その上、森友学園の籠池泰典理事長は、土地交渉の打ち合わせの際に「平成26年4月25日、安倍昭恵夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」と説明し、籠池氏と夫人が現地の前で並んで映っている写真まで提示したというから、これはどう見ても圧力です。